2015/05/25

ゲームデザインにおける帰納と演繹

パズルゲームをのんびり作っています。

問題の作成方法がわかってきました。
時おり、盤面がきれいな流れを生む瞬間があって、なかなか良いです。



ふと思ったのですが、
パズル的なゲームデザインには、主に2つの方法があるのではないでしょうか。

「帰納法」と「演繹法」。

とりあえずメモしてみます。






■1. 帰納法と演繹法

2つのゲームデザイン方法について考えます。


① 帰納法

プレイヤーを10回たのしませるために、10個の異なるしくみを用意するデザイン。
イベント、素材をひとつひとつ手作りする。
たとえば脱出ゲーム、箱庭ゲーム。

原則:
帰納法のゲームデザインにおいては、
作者が神さまである。

   →作者の思い通りに世界がコントロールされる。
     作ったとおりにしか動かない。


② 演繹法

プレイヤーを10回たのしませるために、1個の共通するしくみを流用するデザイン。
イベントの初期配置や、ランダムのシード値のみ変化させる。
たとえばペンシルパズル、落ち物。

原則:
演繹法のゲームデザインにおいては、
ルールが神さまである。

   →作者の予想を超えて、1つのルールから世界が創発される。
          コントロール出来ない。



■2. 木に例えると

2つの方法の違いを理解するため、
ゲームを「木」に例えてみます。

オリジナルのゲームを作る=新種の木をつくるために、
それぞれどういった手順を踏めばよいでしょうか。


① 帰納法

 「木の完成形」を頭に思い描き、
 根をデザインし、幹をデザインし、枝をデザインし、葉をデザインする。
 ひとつひとつをデザインする。
 手を加えれば加えるほど、完成度が増してゆく。

 細部にアイデアを盛り込むことで、オリジナリティを出すことができる。 
 ただし、全方向から見て矛盾なくデザインするのには、多大な労力を要する。


② 演繹法

 新種のタネを探し出して、植える。
 もしくは、既存種の交配を積み重ねて、オリジナルの形になることを願う。
 立派な木が育てば成功。

 もし既存種と同じものが作りたいのなら、タネさえあればコピーできる。
 ただし、新種を作ろうと思うと、単純な努力だけでは成し得ない場合がある。
 運と勘と、失敗の積み重ねが必要。


余談ですが、ピアノ音源でいうと、
帰納:サンプリング音源  (Ivory)
演繹:モデリング音源    (Pianoteq)

に相当するのかもしれません。




■3. どちらが良いのか

どちらの方法で作るのが得策でしょうか。

実際には、二者択一ではなく、
ある箇所は帰納的に、
ある箇所は演繹的に(プロシージャルな感じ)
といったように、組み合わせで成っているのだろうと思います。

制作の目的、作者の立ち位置に応じて、
こんな感じに分けられるでしょうか。

① 帰納法

 明確なゴールイメージが設定されている。
 とりあえず頑張れば頑張っただけ成果はでる。

 採用すべき人:
 ・実作業に長時間がさける人。
 ・チームで作業できる人。
 ・確実に成果(売上など)を出さねばならない人。
   → ゲーム制作を仕事にしている人、企業。
     ずっと作業が続いても耐えられるドMな人。


② 演繹法

 制作に入る前に、出口が全く見えないほどの試行錯誤が必要。
 その間、成果ゼロ。
 もし偶然いいアイデアが見つかれば、後半はとても楽。

 採用すべき人:
 ・納期が設定されていない人
 ・ギャンブラー
 ・もし成果がでなくても死なない人
 ・作品の寿命を後世まで残したい人。
   → 個人制作、ゲーム研究者
     あとで楽するためなら苦労できる人。


上記から、

・確実な成果が必要な場合
  ・ゴールを設定し、「帰納法」でつくる。
  ・もしくは、既存のタネを育てて、
    剪定・付け足し・接ぎ木してオリジナルっぽい形にする「演繹+帰納」など。

・趣味、ゲーム作り自体が目的の場合
  ゴールを設定せず、「演繹法」の偶然に任せる。
  作者の想定外が巻き起こるのを楽しむ。
  納期が無いのなら、成果ゼロでも気長に失敗し続けてみる。
  

といった方法を取るのが良いかなと思いました。




■4. 個人的な作法

僕自身は、主に演繹法で作っています。
こんな感じです。

 ① 既存のルールA, B をえらぶ
 ② 同時に適用して、新たなルールC とする
 ③ Cの成長を応援する 

肝心なルールCの挙動は自分で作らず、
AとBからの創発に全て任せる、ということになります。

だいたい失敗ですが、
ごく稀に面白いルールが生まれる事があります。

ゲームを作っているというより、
あるゲームが偶然見つかって、
自分がそのゲームの最初のテストプレイヤーになる、という感じです。



この演繹的な作り方に、コツはあるんでしょうか。
セレンディピティを自ら養えるんでしょうか。
無理かも。

少なくとも
潜在的に優れたルールCが生成された場合に、
その良さ・深さを見誤らないように、心構えをしておくのは大切かもしれません。




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今日の音楽
エリカ・バドゥってめちゃ良いですね…。
ずっと聴いています。

■Erykah Badu -Turn Me Away (Get Munny)

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