「落ちサビ転調」 を聴いてみましょう。
落ちサビ転調は、
・ラスト1つ前の静かなサビ(=落ちサビ)でキー下げし、
・ラストサビでキー上げして戻す
というアレンジ作法です。
まずは聴いてみましょう。
■楽曲例: めいあいへるぷゆー?
曲構成は下記です。
曲中で、4回サビが出てきます。(C1 - C4)
そのうちの2:45- C3パートが、「落ちサビ」と呼ばれる部分です。
以下、間違いも多いと思いますので、話半分で読んでみてください。
↓
■落ちサビとは
落ちサビとは、最後のサビの前に挿入される、楽器の音量を極端に落としてボーカルを目立たせたサビを指す。「ラストに向けて盛り上がっていくために抑えめにする」意味があるという。(wikipedia「サビ」)つまり「音量落ち」サビということですね。
JPopでは、曲中に落ちサビが入っているのが一般的です。
落ちサビは「ギャップ」をつくるために用いられます。
ふとした瞬間に、あの人の意外な一面が見えるとトキメキますよね。
楽曲も一緒で、
同じメロディーを、違ったアレンジで(とくに弱く・切なく)奏でる部分をつくると、
楽曲全体の魅力がぐっと増します。
■落ちサビに転調を加える
この曲の2:45- C3パートは、ほかのサビC1、C2、C4に比べると音量が小さく、
リズム隊が消えて、鍵盤とボーカルだけになっています。「落ちサビ」ですね。
普通、落ちサビでは音量や楽器数だけを落とすのですが、
この曲の場合、調性(キー)が低くなっていることに注目してみましょう。
自分で口ずさんでみると、その音高の違いがよくわかると思います。
カラオケでキー下げしたような感触がしますね。
音量も落として、キーも落とす、という2つの工夫がなされています。
これを「落ちサビ転調」と呼んでみます。
田中秀和さんの楽曲では、落ちサビ転調が時おり登場します。
■楽曲例: オリジナルスター☆彡
続いて、もう一曲聴いてみましょう。
先程に比べると、登場するキーが3種類になっていて複雑ですが、
サビC1~C4だけに着目すると、落ちサビのC3だけ調が低くなっています。
ここの落ちサビの部分だけ、雰囲気が全然違いますね。
キー -3 はかなり大きい落差なので、ボーカルの歌い方もずいぶん違います。
また、C3→C4の流れも劇的ですね。
C3でいちどクールダウンされ、切なげになった分、C4への跳躍が強調されるのがわかります。
さらに、3:14-の Dパートが極端にキー上げしてあるところもポイントです。
D → C3 → C4 の大きな調性のジャンプが、曲をダイナミックにしています。
■落ちサビ転調の魅力
上記2曲で、なんとなく転調の雰囲気がわかっていただけたかと思います。
落ちサビ転調の魅力を3つあげると、
1. 「落ち」が強調される
2. ラストサビが盛り上がる
3. 元の調に戻る
1. 「落ち」が強調される
調が低くなると、曲調も落ち着きます。
また、メロディーが低くなるので、ボーカルの声量も減り、声質も柔らかくなります。
普通のサビとのギャップがより引き立つようになりますね。
2. ラストサビが盛り上がる
落ちサビで調性を落としたおかげで、最後の上方向転調が強調されます。
実際は元の調に戻るだけですが、上転調の直後だと華やかに響きます。
3. 元の調に戻る
これは感覚的なことなのですが、サビのキーが元に戻るので精神衛生上嬉しいです。
歌う側からしても、ラストサビも最高音はいっしょなので無理なく歌えます。
もしBGMとして繰り返し使う場合でも、アウトロとイントロできれいにループできますね。
■田中秀和さんの作例
落ちサビ転調は、たとえば下記楽曲で聴くことが出来ます。
キーの落とし具合で3つに分類すると、
key - 1 (短二度転調)
・カレンダーガール サビ E -- 落ち Eb 3:15-
・Good morning my dream サビ Eb -- 落ち D 3:14-
・少女交響曲 サビ F -- 落ち E 4:05-
・Do!! Do!! Let me Fun サビ G -- 落ち Gb 3:22-
・WORLD IS CALLING サビ F -- 落ち E 2:48-
key - 2 (長二度転調)
・真夜中のスカイハイ サビ C minor -- 落ち Bb minor 2:52-
key - 3 (短三度転調)
・オリジナルスター☆彡 サビ E -- 落ち C# 3:29-
・Let's アイカツ! サビ E -- 落ち C# 3:12-
・めいあいへるぷゆー? サビ F# -- 落ち Eb 2:45-
このような感じになります。(たぶん間違いあります)
利用頻度はそれほど多くないのですが、
田中さんの使い方がすばらしく凝っているので、耳に残るのですよね。
いい曲ばっかり。
この工夫は、フルコーラス音源を手に入れてこそわかる楽しさなので、
ぜひCD買って聴いてみてください。
■調性の落ち幅
落ちサビ転調は、ざっくりいうと
キーの振れ幅が大きいほどドラマチックになると考えます。
上記のリストだと、
キー -1 は自然にさりげなく、
キー -3 は劇的 というイメージです。
キー -1 は、下げ幅としては小さめですが、
ラストサビで定番の「半音上げ」が使えるので、バランスよく使えます。
今回紹介した2曲は、
効果の分かりやすいキー -3(短三度転調)のタイプです。
劇的ですよね。初めて聴いたとき感動しました。
■まとめ
田中秀和さんの楽曲に登場する「落ちサビ転調」を紹介しました。
(正式名称わからず、造語です)
今回は説明を省きましたが、田中秀和さんの作曲の場合、
落ちサビへ持っていくためのDパートや間奏が、実際にはめちゃめちゃ面白いんです。
パズルのようにピタッと落ちサビがはまる感覚がたまりませんよね。
こちらもぜひ注意深く聴いてみてください。
また、落ちサビ転調は、田中さん以外にも使い手が多くおられると思いますので、
よい例をご存知の方は教えてくださるとうれしいです。
■過去記事
◆田中秀和さんのスケールを聴いてみよう
http://kaho-ss.blogspot.jp/2017/01/blog-post_9.html
メロディーを彩るスケールの紹介です。
◆田中秀和「PUNCH☆MIND☆HAPPINESS」の楽しいスケールワーク
https://kaho-ss.blogspot.jp/2017/11/punchmindhappiness.html
1曲の中でのスケールの使い分けを聴いてみます。
◆聴いて覚える田中秀和さんのコードワーク
http://kaho-ss.blogspot.jp/2014/10/blog-post.html
ハーフディミニッシュ・ディミニッシュコードの紹介です。
切なげ。
◆田中秀和さんのオーグメントコードを聴いてみよう (田中さん特集2)
http://kaho-ss.blogspot.jp/2014/12/blog-post_7.html
http://kaho-ss.blogspot.jp/2014/12/blog-post_7.html
オーグメント(オーギュメント)コードの紹介です。
変てこかわいい。
◆神前暁さんがつくる魅惑の「短3度転調」
http://kaho-ss.blogspot.jp/2014/09/3.html
今回も登場したキー±3 の転調です。
好み。
http://kaho-ss.blogspot.jp/2015/02/lamp1.html
凝ったコードでキュートなポップス。
いつも楽しくブログを拝見させてもらっています。
返信削除中でも音楽関係の考察はとても勉強になり、私自身音楽に対しての楽しみ方が増えて本当に感謝しています!
先生とも呼べるkahoさんに少しお願いがあるのですが、解説してもらいたい曲があるのです。神前暁さんの「chocolate insomnia」という曲。
私自身音楽の知識がないのでこの曲のコードをみてもイミワカンナイ!って感じなのです。
良ければこの曲について解説してもらえると嬉しいです。よろしくお願いします。
こんにちはzunana777さん。お読みいただきありがとうございます。
返信削除全然先生じゃないです!
歌物語は良いアルバムですね。神前ワールド満載で、最近の愛聴盤です。
なかでも「chocolate insomnia」は特に良い曲ですよね。
この曲は「転回形コード」という特徴的な和音が使われており、他の曲に比べると聴き取りにくいのではないかなと思います。
転回形はクラシック音楽(特にピアノ曲)でよく使われるので、なんだか上品な音がしますよねー。
現在、住まいの引っ越しなども合ってなかなか時間がとれないのですが、3月中には更新再開したいなと思います。
余裕があれば書いてみますね。気長にお待ち下さい。
コメント返信ありがとうございます~!ぜひせんせぇと呼ばせてくだせ~(笑) 引っ越しはなにかと忙しいですよね~ 思い通りの環境の部屋に整理するのだるいですよねほんと(´・ω・`)
返信削除リクエストの方は余裕があればで結構ですので・・・といいつつ期待してまっています(笑) なるほど「転回形コード」・・・あのオンコードの正体はだったのかぁ。。。