2013/01/07

笹井宏之さんの歌集「えーえんとくちから」

今年もよろしくお願いします。
たくさん寄り道したいです。


笹井宏之さんの歌集「えーえんとくちから」
笹井さんは、26歳で急逝された、才ある歌人です。

以下、紹介します。






      風。そしてあなたがねむる数万の夜へわたしはシーツをかける



      両親が出会ったという群青の平均台でおやすみなさい



      この森で軍手を売って暮らしたい まちがえて図書館を建てたい   



      「はなびら」と点字をなぞる ああ、これは桜の可能性が大きい


僕は短歌の鑑賞法には疎いのですが、
それを補うくらい、笹井さんの感性は心に刺さります。

僕は筒井康隆さんやモーリス・ラヴェルにあるような、
「抑制からこぼれ落ちた叙情」がとても好きなのです。

照れの叙情、とでも言えばよいのでしょうか。
冗談のなかから、寂しさがぽろりとでるような。
機械の身体から、涙がぽろりとでるような。

彼の作品は、それに似た、いやそれ以上に繊細な、
はにかんだような手触りが感じられます。

上記の歌を見ても分かる通り、
一見すると非現実的で、奇をてらったような作風にも思えますが、
歌の隙間から、とうとうと流れる感傷の一端が顔を出します。
ときには、風や、シーツとなって。


この言葉の感覚。すばらしいです。
僕も、まちがえて図書館を建てたい。

2 件のコメント:

  1. こちらのHPから笹井宏之さんの作品を知り、その世界をのぞきました。

    自分も短歌や詩に疎い人間で、
    まして言葉もつたないものですから、短歌の側からしたら
    ガラス窓の向こうで見られているような気分だったと思いますが、
    一枚隔てた場所から見ていても、
    透明さと空気の清さに触れた気持ちでした。

    いい本を紹介していただけました。
    ありがとうございます。

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  2. こんにちは。
    この文章が笹井宏之さんを知るきっかけになったなら、とても嬉しく思います。

    コメントに書いていただいたとおり、笹井さんの作品は
    僕らの知識や感性の有無などをとびこえて、優しく誘ってくれる感じがします。
    たった一行でこれだけ心動かされるなんて不思議です。

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