2019/01/24

惹かれるポップ・ミュージック(19/01/24)

素敵な曲を聴きます。

1. Urakami Kevin Family - 芸術と治療
2. The 8-Bit Big Band - Still Alive (Frank Sinatra Big Band Swing Version)
3. Archie Shepp - Quiet Dawn
4. Le SuperHomard - Paper Girl
5. Rai Thistlethwayte - Overtime (feat. Ben Vanderwal)
6. Wake Up, Girls! - 土曜日のフライト
7. 薬師丸ひろ子 ‐ Woman "Wの悲劇"より
8. LOVELYZ - Fondant
9. Toccoyaki feat. somunia - チャイナアドバイス(相対性理論カバー)


■1. Urakami Kevin Family - 芸術と治療
浦上ケビンさんのソロユニット「Urakami Kevin Family」の
待望の初音源です。まだ見ぬ音楽に出会えるうれしさ!
複雑なアレンジ・リズムの応酬で溺れそうになりますが、
ハーモニーはポップスの美味しい響きが詰まっていて胸キュンです。

ダリウス・ミヨーの「屋根の上の牛」みたいな、
同時に2曲が鳴っているようなわちゃわちゃ感が楽しいです。

1:32- のオクターブユニゾンがツボです。歌もお上手ですよね。
4:55-のラストサビがとても好き。

セルフライナーノーツも公開されています。
https://note.mu/urakouji/n/n189466d6bf38

0:56- 網膜「に焼き付」けて のところ、普通はFの音かなと思いますが、
EとFの間の微分音なのですか……。気づきませんでした。
上行パターンで微妙に上がり切らない演出なのですね。
1:23- 根本て「き発想」から のところも同じく。

一方、2番の同フレーズ2:33- は微分音ではないので、
こちらはするっと耳に入るように思いました。比べると違い分かりそうです。
まだ見ぬ工夫がいっぱいで、何度も聴いてしまいます。
(まったく全貌がみえません……)



以下、続きます。




■2. The 8-Bit Big Band - Still Alive (Frank Sinatra Big Band Swing Version)
惚れ惚れする選曲、アレンジです!
名作ゲーム「Portal」のEDテーマ、「Still Alive」のおしゃれなカバー。
原曲は こちら です。作曲者はJonathan Coulton。

8-Bit Big BandのアレンジやMVみてると、原作愛を感じますよね。
ボーカルのBenny Benackは歌声も素晴らしいばかりか
なんとトランペットソロ2:15-も担当してます。

1:21 歌詞の「heart」とコンパニオンキューブの♡をかけてるんですね。
そのあとの歌詞とのシンクロも面白いです。(キューブかわいそう)

この曲、今後の2ndアルバムに入るのかもしれません。
次も名盤を期待してしまいます。


■3. Archie Shepp - Quiet Dawn
ヘタウマの完成形みたいな曲です。凄みがあります。

0:14- 作曲者Cal Masseyの娘 Waheeda(7歳)がボーカルをとります。
歌はお世辞にも上手くないのですが、ピッチの緩さが逆に
唯一無二の可愛さ・クールさに思えてきます。
バックの完璧なオケに乗ると、これで正解だという謎の説得力があります。

2:06- ここからはメロディーも難しいと思うのですが、
 ちゃんとピッチも取れててジャズボーカルっぽい節回しになってます。
4:32- トランペットとボーカルのユニゾンも
ギリギリセーフでハマっていて、とても格好良いです。
ピッチのぶれる歌声には、譜面で表せない魅力がありますね。


■4. Le SuperHomard - Paper Girl

この曲とても気に入りました。フランスのバンドです。
Elefant Recordsのミュージシャンは好みな方が多いです。

0:08- 冒頭、いつものクリシェで始まるのかと思ったら、
途中の怪しげなaugの響きにドキッとしました。

0:08-
I    I△7   Iaug9    IV△7

0:24-ではシンセのアルペジオが追加されて、
ホールトーンのふわふわな音がしますね。より違和感が際立ちます。

コードの比較用に、同曲の別アレンジVerもありました。
https://www.youtube.com/watch?v=jGnJNvumprU
0:08-
I    I△7    I7     IV△7
こちらはいつものクリシェで聴きやすいですね。
どちらがお好みでしょうか。

彼らは、Ennio Morricone、Stereolab、High Llamasとかお好きだそうです。
なんとなく曲調から好みがわかる気がしますね。
2/22にアルバムでるらしく、とても楽しみ。



■5. Rai Thistlethwayte - Overtime (feat. Ben Vanderwal)

Rai Thistlethwayte(レイ・ディットゥルスウェイ)は
KNOWERのサポートもされているオーストラリア出身の方。
「Overtime」のセッション動画でおなじみの髭の方です。(→動画リンク

サビ終わりに、半ずれ調が使われてます。
1:22-
IIIm7      VIm7       #IV△7/#V       IV△7/ V
                          (元:IV△7/V)

I△7      #VIm7/#II        #IV△7/#V    IV△7/ V
       (元: VIm7/II             IV△7/V)

半ずれ調は、キーを部分的に+1または-1しても、
同じ機能として使えるというテクニックです。
(以前コメントで教えていただきました)

この曲では+1方向の半ずれになってます。
意外性ありますが、不思議と引っ掛かりなく聴けてしまいますね。
ちょっと聴きとれるようになって嬉しいです。


■6. Wake Up, Girls! - 土曜日のフライト
MONACAが手掛けたWake Up, Girls! の最後のEP聴きました。
Wake Up, Best!MEMORIAL Vol.8
https://itunes.apple.com/jp/album/1449682150
4曲とも、なんて素晴らしい楽曲・歌唱なんだろう。
数年後、十数年後にこのEPを聴いても、同じように感動すると思います。



M3「土曜日のフライト」は
作詞 只野菜摘さん。作曲 MONACA・田中秀和さん。
2:27-からのリハーモナイズの構想は感動しました。天才と思いました。
伏線が美しく回収されていくので、聴いてて泣けてしまいます。



僕は、3:40- のささやかな2小節の付け足しがとても好きです。
シンプルな Isus4 → I が眩しく感じられますね。

ここのコードワークはとても簡単なのですが、
1:14-や2:27-ではなかった新しい展開で、意外な喜びがあります。

後半1:51-から最後まで、主和音(I)はここにしか登場しないので、
この2小節は曲中でも特別明るく響くのですよね。
最後のサビの前に、一度気持ちがゆるやかにほどけます。

また、Iを置くことで、最後のサビ頭#IVm7b5への繋ぎが
遠い増4度の動きになります。(I→#IV)
より美しく劇的に聴こえますよね。
この2小節が、ラストサビへの滑走路になっている感じがします。



1:01- Bメロ入りの、
まも  れて       い る         んし   んで
        F#m9      A△7/B         E△9
        (Vm9     bVII△7/ I        IV△9  )

という9th含む部分転調はユーミン感もほんのりありますね。(後述)
赤字の部分の歌メロが、美しく9thを歌っています。


■7. 薬師丸ひろ子 ‐ Woman "Wの悲劇"より
作詞は松本隆さん、 作曲: 呉田軽穂(=松任谷由実)さん、
編曲は松任谷正隆さん。
松任谷由実さんの曲では、この曲のサビ転調がめちゃスキです。
1:10-
          ああ ときのかわ      をわたるふね        
          Bbm9                    Db△7/Eb          Ab△9
Eb Maj  ( Vm9                   bVII△7/ I           IV△9 )
Ab Maj( IIm9                     IV△7/V           I△9 )

先ほどの曲と同じく、
Vm9の9thと、IV△9のナチュラル9thを歌メロ(赤字部分)が担当します。
下属調へ転調した瞬間の、9thの美しい歌声にドキッとします。
(19/1/31追記  ちょっと間違ってたので直しました)

この曲は、
Aメロのメロディーはコードトーンの落ち着いた響きが使われ、
サビのメロディーからナチュラルテンション(9th,11th)を踏んでいく
構成になっています。
転調も交えて、サビで一気に世界が広がる感じがしますね。完璧な曲です。


■8. LOVELYZ - Fondant
作曲はJ.Yoonです。ストリングスの感じで作風わかりますね。
全般的に転回形が美しく、聴きやすいハーモニーに思いますが、
0:59- ここなに!? ってなります。
ここの一小節の4音だけコード名を無理やり付けたら、こんな感じでしょうか。

0:59-
 A6sus4      Caug/F#    B7sus4/C     Am6
(IV6sus4   bVIaug/II   V7sus4/bVI   IVm6 )

コード名見ても全くわからないです……

よく見てみると、上記の全ての構成音が、
Aメロディックマイナー(IVメロディックマイナー)のスケールに乗っています。
つまり、スケールを決めて各声部動かした結果、偶成和音ができた
というように考えればよいですね。

動きの結果的に、augのオンコード(赤字)も一瞬経由しているようで
確かにほんの一瞬だけ鋭い響きがあるかもしれません。


■9. Toccoyaki feat. somunia - チャイナアドバイス(相対性理論カバー)

相対性理論のカバー音源です。アレンジToccoyakiさん、歌somuniaさん。
原曲の作曲は真部脩一さん。
めちゃ素敵なアレンジ!

1:14- このサビ、原曲超えるくらい楽しいサウンドです。
相対性理論とチップチューンは相性ばっちりですね。

いつも思いますが、このメロディーとコードの組み合わせって
(ペンタトニックメロディー+王道進行(4536))
なんでこんなに美しく聴こえるんでしょうか。

シンプルな割りにおいしい、卵かけごはんみたいな。
魔法です。


2 件のコメント:

  1. メガネのコンディショナー2019/01/26 0:15:00

    kahoさんこんにちは。
    自分にはない視点で音楽を分析されており毎度楽しく拝見させてもらっています!
    じぶんも相対性理論が好きで早10年になることに驚いています…
    同じような匂いのするバンドを見つけましたので厚かましいですが推薦させてください。

    ネコゼ「水曜日」
    https://m.youtube.com/watch?v=BncR-rrMXWM

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    1. こんにちはメガネのコンディショナーさん。お読みいただき誠にありがとうございます。
      相対性理論が長年お好きなのですね。10年、と聞いてビックリしたのですが、ハイファイ新書が10年前なのですか……。

      ネコゼ「水曜日」お聞きしました。緩やかな演奏が心地よいですねー。相対性理論と同じような匂い、というご意見とても共感できます。

      2:20- で、相対性理論「テレ東」サビと同じコードワーク、同じ調での転調がありますね。(AMajor→EMajor)ここの聴き心地が美しくて気に入りました。
      集団行動「充分未来」にも使われているテクニックです。

      2:46- は、タルトタタン「恋するカレンダー」サビ終わりっぽいメロディーがちょっとだけ登場しますね。かわいい。

      とても好みな作風なので音源欲しいですが、まだ流通版はないようなので楽しみに待ちたいと思います。

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