2017/03/20

真部脩一(ex. 相対性理論) のペンタトニックスケールを解析してみよう

今回は、元・相対性理論のメンバーで、Vampilliaでの活動や
タルトタタン・ハナエのプロデュースなどで活躍する真部脩一さんの
ペンタトニックスケール」(メジャーペンタトニック)を取り上げます。

「ドレミソラ」の5音で出来ており、「ファ」と「シ」が無いのが特徴です。
メロディーの使用例は下記です。独特で可愛い旋律ですよね。

・相対性理論 - チャイナアドバイス


「真部脩一さんの作曲は、どのくらいペンタトニックっぽいのか?」
「ペンタトニックの並べ方に特徴があるか?」
を調べてみたいと思います。

また、現・相対性理論の解析も、記事の最後にのせました。

少し実験的な内容なので、話半分で読んでみてください。
以下、続きます


1. 解析方法

結果に進みたい方は、飛ばして 2. からお読みください。

手順 1. 

真部脩一作品のメロディーラインを耳コピでtxtデータにします
例:さわやか会社員だと

       「みれどらそらどれみれどれ みふみふみれどれみれどれみれ
         みれどらそらどれみれどれ みふみふみれどれみれどれど、…」

こんな感じです。
作るのがめんどくさそうです。

   ルール:移動ドで聴きとりする。変化音は西塚式で表記。
     オクターブの違いは無視する。
     ラップ部分は除外する。必ず1音符1文字にしておく。
     メロディーの区切れ位置に「、」を入れておく……など。



手順2. 

N-gram法をつかって、メロディーの出現頻度、共起関係を解析します。
簡単にいうと、txtの「ドレミファソラシ」がそれぞれ何個あるか数えます
ここは便利なソフトにお任せします。

    ルール:ソフトは「monogram ver0.7.3a」を使用
       データ解析後、区切れ文字「、」を含む音列は除外する
      単音を数える際は、「単語カウント」も利用しました。


手順3. 

数えた結果をexcel・パワポでまとめ、図表でまとめます。


解析対象

作曲が、真部脩一さんの単独名義のもの。

・相対性理論『シフォン主義』
・相対性理論『ハイファイ新書』
・相対性理論『シンクロニシティーン』の#1, #4, #7, #10
・タルトタタン『テトラッド』
・ハナエ『十戒クイズ』
・ハナエ『上京証拠』
・その他「Q&Q」「糸」「ささやかだけど、好ましいこと」
「lilac」「mirror mirror」「well-known blueberry」
「101回目のファーストキス」「身代わりキボンヌ」

対象は55曲です。

僕のざっくりした耳コピに基づくため、結果の正確さ・信憑性はありません
だいたいの雰囲気がわかればいいかなと思います。




2. メロディーの構成要素 (1-gram)

■ 2 - 1. 平均ペンタトニック比率

 まずは、真部メロディーがどんな音で出来ているかを調べます。
 すべての楽曲から、ドレミの比率を出しました。


図1 真部メロディーの要素(全楽曲)


ペンタトニックっぽい!

ドレミソラが多く、ファ・シが極端に少ないのがわかります。
多い順に レ  > ミ ≒ ド   >  ソ   >   ラ    >   ファ   >   シ 。
シが1.3%しかないのが驚きです。これで作曲ができるとは。
(数値データは、記事最後にあります)

***

ここで「ペンタトニック比率」というのを考えました。
どれくらいペンタトニックにかたよっているかを示す指標です。

 ペンタトニック比率(%)=(ド・レ・ミ・ソ・ラの出現回数)÷(全音符数) x 100

 ※メロディーが全てペンタトニックなら、ペンタトニック比率 100%
  ドレミファソラシが等確率で出るなら、ペンタトニック比率 71.4%

これを計算すると、
真部脩一さんの平均ペンタトニック比率は96%となります。

今のところ比較対象がないですが、とても高い感じがしますね。
ペンタトニックへのこだわりとクセが凄いです。



■ 2 - 2. アルバムごとのペンタトニック比率

 続いて、アルバムごとのペンタトニック比率を見てみます。
 ※シンクロニシティーンは真部曲4曲のみ。全曲版は記事最後にあります。


図2 アルバムごとのペンタトニック比率


どのアルバムも高い値です。
95%以上はペンタトニックで書かれているんですね。

動きをみてみると、
シフォン主義 → シンクロニシティーンにかけて比率が増加しており、
ペンタトニックメロディーが確立されていく様子が見えますね。

Q&Q・テトラッド以降は、徐々に7音音階が使われはじめたので、
他に比べると数値が低くでていますね。
プロデュースの観点から、作曲のバリエーションが増えたと考えられます。

最近の上京証拠は、ハイファイ新書に近いくらいペンタトニックが強い
というのも面白いです。



■ 2 - 3. 曲ごとのペンタトニック比率

それぞれの曲が、どれくらいペンタトニックで書かれているかを見てみます。
※特に不正確なデータなので、参考程度でどうぞ。


表1 各楽曲のペンタトニック比率

(クリックで拡大)


図3 ペンタトニック比率と作曲数


ペンタトニックが濃いほど曲数も多い、というデータですね。

ペンタトニック比率が99~100%の楽曲が15曲と、いちばん多くなっています。
「地獄先生」「チャイナアドバイス」「恋するカレンダー」など。

ペンタトニック比率が小さいほうは、グッと曲数が減りますが
「元素紀行」「Q&Q」「恋は神聖ローマ」などがあります。
試しに聴いてみましょう。


・相対性理論 - Q&Q 

確かにペンタトニックは弱めです。
7音音階を主体に、サビ終わりに部分転調も入ります。

ペンタトニックの弱い曲でも、真部さんらしさがあるのが面白いです。
ペンタトニックも、独特な作曲技法のひとつに過ぎないんですね。



■ 2 - 4. まとめ

 ・真部メロディーの平均ペンタトニック比率は96%
 ・アルバムごとにみると、いずれもペンタトニック比率は95%以上
 ・ペンタトニック比率が増えるほど、曲数も増える。
  最も曲数が多いのは、比率99~100%。
  



3. ペンタトニックの連結 (2-gram)

■ 3 - 1. 音符間の連結しやすさ

今度は、真部メロディーにでてくる、連続2音の組み合わせをみてみます。
2-gramの統計をとると、こんな生データが得られます。

表2   2-gram



わかりにくいです。


登場回数順で並ぶのですが、これだけだと理解しにくいですね。
 ドから接続しやすいのは、ド→レ、ド→ラ、ド→ド の順
 レから接続しやすいのは、レ→ド、レ→ミ、レ→レ の順 …

という感じに、それぞれの音符から進みやすい方向を抽出してみます。



■ 3 - 2. 他の音符への進みやすさ

ペンタトニックの接続関係を、こんな風に絵にしてみました。





図4  他の音符への進みやすさ


これならわかりそうです。


矢印の太さが、その動きの多さを示しています。(太さ ∝ 頻度)
円を描いている矢印は、同音の連続です。

どの音からも、隣り合う音へ進みやすいのがわかりますね。
また、特に「ドレミ」の3音に矢印が集中しています。
ドレミ間は往復しやすそうです。

右回りと左回りを比べると、左回りの
「下行モーション」(ラソミレドラ)のほうが矢印が強めですね。

ペンタトニックがシンプルなので、見やすい図になりました。
これらを踏まえて、次の節へ進んでみましょう。



■ 3 - 3. まとめ

 真部メロディーの進む向きを絵にすると、

 ・隣り合うペンタトニックの音へ移動しやすい。
 ・「ドレミ」の3音間での移動が強い。
 ・上行と下行だと、下行のほうが少し強い。




4. ペンタトニックのフレーズ (n-gram)

■ 4 - 1. ペンタトニックフレーズ

では、4音以上の組み合わせを見てみましょう。
真部脩一さんの曲に登場するフレーズを、
4音から8音まで、登場回数が多い順に並べました。


表3 4-gram ~ 8-gram



見にくい表ですが、書いてあるフレーズには馴染みがあります。

一つ一つ口ずさんでみると、確かに真部さんっぽい感じがします。
似たフレーズも多そうなので、分類分けを考えてみます。



■ 4 - 2. フレーズの分類

特徴ごとに色付けしたものが次の表です。


表4 4-gram ~ 8-gram の分類



緑色が固まっていますね。

いちばん特徴的なのは、前の絵にもあった「ドレミ」の往復です。(緑色)
 ……ドレミレドレミレドレミレドレミレドレ……
は、繰り返しやすいフレーズなのですね。パラレルパラレルとか。


下記4種類で分けてみました。

1.  「ドレミ」間を往復するフレーズ
   例「レミレドレミレド」「ミレドレミ」など

2.  オクターブ上の「ソ、ラ」から、1の「ドレミ」につながるもの
   例「ソラソミレド」「ソミレドレミレド」

3.  1の「ドレミ」から、オクターブ下の「ソ、ラ」につながるもの
   例「ドレミレドラ」「レミレドラソ」

4.  2個の繰り返しを含むもの
   例「ミレミレド」「レミレミレドラソ」


全体としては下行の動きをしつつ、
頭に「ソ、ラ」、真ん中に「ドレミ」、お尻に「ソ、ラ」
という構成が多そうですね。



■ 4 - 3. まとめ

よく出るフレーズをまとめると、

・「ドレミ」間を往復するフレーズの頻度が高い。
・上の「ソ、ラ」から「ドレミ」につなぐ、
 「ドレミ」から下の「ソ、ラ」につなぐ動きがある。
・2音の往復がある。




5. 解析のまとめ

真部さんのペンタトニックメロディーをみてみました。

・メロディーのペンタトニック比率は、96%。
・ド、レ、ミの繋がりが強い。下行の方が強い。
・「ドレミ」の往復フレーズが多い。頭とお尻に「ソ、ラ」

この結果は、
個人的には聴いた感触とまあまあ合っているかな、と思います。
ぼちぼちなデータになりました。

***

今回の解析では、
・どの音をどれくらい伸ばすか、
・どこに休符をいれるか、
・表・裏拍のどちらを使うか、

といったリズムの話が抜けているので、
作曲時は、歌詞の譜割りもあわせて上手く配置するのが大事ですね。
(譜割りがいちばん難しい部分だと思いますが……)

さらに、どのコードの上にどの音が乗りやすいか。
ベースとメロディーとの音程関係(9th,11th, 13thの使い方)
あたりがわかると、いい曲が書けそうです。

***

真部脩一さんは、今回の記事で示したように
作曲技術が高いというより、
作曲技術をデザインする能力が高い、というところが特徴ですね。

ふつうは、曲を作ろう、とは思っても
作曲を作ろう! とはあまり思わないですよね。
こういう「作り方を作る」姿勢に共感をおぼえます。

本記事の内容は、
真部さんっぽい作品をつくるためというより、
真部さんのように、独自の体系に基づいて作品をつくりたい
というときのヒントになればいいなと思います。



6. おまけ(相対性理論 編)

おまけとして、
相対性理論のアルバムごとのペンタトニック比率をつくりました。


図5 アルバムごとのペンタトニック比率 (相対性理論)



作曲者の変遷をみると、

ハイファイ新書:作曲は真部脩一単独
シンクロニシティーン:作曲は真部脩一、永井聖一、やくしまるえつこ
Town Age: 作曲はやくしまるえつこ、永井聖一
天声ジングル:作曲はほぼ やくしまるえつこ(+山口元輝)

ペンタトニック比率は90%以上と高いため、以前までの作風は受け継ぎつつ、
永井さん、やくしまるさんの新しいエッセンスが加わっている、
という流れがわかりますね。




7. その他記事

本文で書けなかったのですが、真部脩一さん新しいバンドやるみたいですね。
バンド名「集団行動」って、相変わらずの言語感覚で期待しちゃいます。
楽しみ。
(17/04/16追記) ライブ観ました。
ざっき。バンド「集団行動」のライブ観ました

(17/03/28追記)
V6 の48thシングルに参加されるみたいです!
・「GOLD」作詞作曲:真部脩一   編曲:トオミヨウ

待望の男性ボーカル曲、うれしー。
前例がないので、V6が可愛くなるか格好よくなるか、想像つきません。
トオミヨウさんも恐ろしくアレンジ上手い方だし、とても楽しみ。


■blogの過去記事

ハナエ・真部脩一の「上京証拠」をみつけよう

相対性理論+タルトタタン(真部脩一)のマッシュアップ

相対性理論の音楽から、シンプルなアレンジを学ぼう

真部脩一(ex. 相対性理論) の「モチーフ作曲法」


■外部サイトの記事

あの人の音楽が生まれる部屋 Vol.25 真部脩一 - コラム : CINRA.NET

クリエイティブなアイデアの出し方とは? デザイン業界と音楽業界のプロが語るモノづくりのルール

 → インタビューを見ると、
  本人の語る言葉と、音楽から感じる印象が合ってるのがいいですね。
  大きくもなく小さくもなく。ちょうど合ってます。

(4/6追記)
下記の本は、真部さんタイプの独創を考えるのに有用です。
・『インサイドボックス 究極の創造的思考法』
 https://www.amazon.co.jp/dp/B00KKGVSSM/


8. 補足:グラフの数値データ

表5 真部メロディーの要素 (全楽曲)



表6 アルバムごとのペンタトニック比率
(真部脩一)


表7 アルバムごとのペンタトニック比率
(相対性理論)



表8 曲ごとのペンタトニック比率
(現・相対性理論)

※全く自信ないです

4 件のコメント:

  1. 久しぶりの真部さんの記事、とっても面白かったです!
    ペンタトニックのメロディー。って言葉だけ聞くと、ありきたりで埋もれちゃいそうな感じがして身構えちゃいますけど、相対性理論の中毒的なメロディが昔から大好きな理由がなんだかわかった気がします。
    ”他の音符への進み方”の図。特に分かりやすかったですし、作者によって好きなメロディの動き方が顕著に現れるもんなのだなぁ...と感服しました。
    まとめの最後に書いてました「どのコードの上にどの音が乗りやすいか」などとても気になります...何か気づかれましたら是非また記事をあげてもらいたいです!

    返信削除
  2. こんにちはJoeKさん。お読みいただきありがとうございます。
    真部さんの作曲はとても好みです。「ありきたりで埋もれちゃいそうな」ルールが引かれるからこそ、想像を超える発想が生み出されるのだと思います。

    いろいろな方法でメロディー解析を試してみましたが、「他の音符への進み方の図」は見た目にも楽しいので、他の作曲家のものも作りたくなりますね。
    メロディーとコードも一緒にデータ化できると、解析の幅が広がりそうです。いい方法ないか調べてみたいですね。
    今後も、なにかしら記事にしようと思います。

    返信削除
  3. はじめまして。相対性理論のベースを練習してたらなぜかこの記事にたどり着きました。とても面白かったです。自分も進行方向のときから真部さんのファンと思ってましたがここまで緻密な研究されてる方がいるとは...
    正直ハイファイ新書以降真部さんの楽曲を聴いてなかったですがこれを機に他の曲も聴いてみたくなりました。
    学生時代、相対性理論のコピー(そのときはギター)をやったときはどうせおしゃれなコードやスケールを多用してるんだろうなと思い、全く耳コピできなかったんですがここまでシンプルなルールに基づいて作曲してるとは、自分の耳の悪さと力量のなさが分かりますね。しかし、ペンタトニック多用・同じコード進行でも飽きさせないむしろ新鮮に聴こえるから真部さんやっぱりすごい人ですね...。
    なにか自分語りばかりになってしまいましたが、昔のこと色々思い出すぐらい面白い記事でした。他の記事も読ませていただきます。

    返信削除

  4. こんにちは。お読みいただいてありがとうございます。
    真部さんの曲がなぜかツボなので、つい記事をしたためたくなります。間違いも多いと思いますので雰囲気だけ見てくださいね。
    真部さんの相対性理論以降の作品も、変わらず(なおさら)素敵なのでオススメします。
    今度の「集団行動」は、相対性理論以来の自主的なプロジェクトなので、力作に期待してしまいます。

    真部さんは、いつもシンプルで新しい提案に溢れているところが良いですよね。
    簡単な方法で再現性もあるので、フォロワーの方が惚れるのもわかります。
    自分が知っているつもりだったのに、なぜか新鮮に聴こえるサウンドを提示されると、いつもびっくりしてしまいます。

    以前に理論のコピーをされていたのですね! イイですねー。
    僕はベースやギターの演奏ができないので、演奏的にどう優れているのかわからないんですが、
    ペンタトニックなのに真部感あふれるフレージングにはいつも惹かれます。

    返信削除