2017/07/05

集団行動の1stアルバム『集団行動』を聴こう

バンド「集団行動」の1stアルバム『集団行動』を聴きます。
「集団行動」は、真部脩一、西浦謙助、齋藤里菜の3人からなるバンド。
『集団行動』は、近年稀にみる、超ステキなデビューアルバムです。

彼らの作るポップスの、入門編かつ最高傑作だと思います。
大好き。



「集団行動」というグループの好きなところを挙げてみると、
こんな感じです。

1. 明るく楽しいところ
  すてきなポップ・ミュージックをつくるぞーという単純な熱意が感じられます。
  齋藤里菜さんの前向きな人柄にほだされたのかも。
  ライブとかで演奏を観ると、楽しそうでキラキラしてます。
  今後の戦略が全然なさそうなところも素敵。 

2. 過去の活動を肯定しているところ
  今までの活動の反動ではなく、
  今までの素晴らしい作品群に、もっと名作を加えようという姿勢が好きです。
  相対性理論も、タルトタタンも、ハナエさんプロデュースも、
  Vampilliaも特別な作品で、それがちゃんと肯定された感じがしました。
  (もちろん、進行方向別通行区分もそうですね)

3. しゃべるところ
  自分の言葉で、作品のことを語りはじめたところが好きです。
  今までは、ファンは数少ない情報を魚釣りのように待っていたけれど
  集団行動は情報がいっぱい飛んでくるのが単純にうれしいです。
  待望の西浦さん参加のインタビューも出ました。
  http://natalie.mu/music/pp/syudan

  めちゃいいインタビューですね。なぜか感動しちゃう。



以下は、音楽的に好きなところのメモです。
のんびり書いていたら分量が増えてしまったので、
お時間あるときに、音源片手にお読みください。


■1. ホーミング・ユー
この曲は、単音のフレーズがたくさん重なってできていますね。
(SKY-HI(日高光啓)さんもラジオで言及されていました)
0:11のピアノロールを作ってみると、こんな感じです。
各楽器ごとに色分けしています。
上2つがシンセ、真ん中2つがギター、下がベース。
コード演奏でなく、5本くらいの単音フレーズが組み合わさっています。
こういう音楽をポリフォニーといいます。ポップスでは珍しいですね。

ポリフォニーの効果は、一言でいうと「じわじわくる」です。
一回聴いただけだと全貌が聴きとれないけれど、
徐々に一つ一つの動きの絡み合いがわかって楽しくなってきます。

特に、真部脩一さんの場合は、
一つ一つがペンタトニックスケール(5音音階)で構成されているので、
めっちゃ独特で面白い響きですね。5人の真部がいる。



この単音のなかに、齋藤里菜さんの歌がすっとハマってます。
アクが強くなくて、ケレン味もなくて馴染みが良いので、
声・ギター・シンセ・ベース・ドラムの動きが同時に耳に入ってきますね。

好ましい普通っぽさ・棒さ があるのに、
他と一線を画す芯もあるんですよね。普通界のカリスマになれそう。

声質でいうと、
アルバムの所々で、低音・ハスキー・鼻声がピタッとハマる瞬間が感じられて
もっともっと聴いてみたいです。

齋藤さんのボーカルには「演奏と並んで光る」という魅力がありますが
これから「演奏を食っちゃう声」にめきめき進化して、
真部さん西浦さんとパフォーマンス対決になるのが楽しみ。



真部さんのアレンジで好きなのが、
「曲中のモチーフ・リフ・リズムを、曲の別のところで引用する」
というテクニックです。

ホーミング・ユーでは
イントロ(動画の0:11-) のギターリフのリズムが、
最後のサビ(動画の3:06-) で回帰します。
最終回で味方が助けに来た! みたいな気持ちよさがありますね。

アルバムのいろんなところに、このテクニックが使われているので、
以下、気づいたところはちょっとずつ触れていきます。



■2. ぐるぐる巻き
イントロなしですぐ曲に入って、2:35でスパッと終わる。
歌詞も相まって端的で耳を奪われるサウンドです。

「ぐるぐる巻きにしてやるよ」というキャッチーな歌詞に混ぜて
「月に叢雲 花に風 そんな季節にしてやるよ」
って歌詞をはめられるような、そんな大人になりたい……。



この曲は、西浦さんのリズムのデザインが良くて、
シンプルな中に、0:00、0:57、1:54の、2拍子の付け足し(たたたん♪)が
たまらないです。

アルバム通してリズムをみてみると、
ここぞというところで、気持ち良いタメ・ブレイク(無音)が
使われているように思いました。
西浦さんと真部さんの息ピッタリの動き。

例えばこういうところです。
・ぐるぐる巻き 1:44- の裏拍
・ぐるぐる巻き 2:31-   ラスト
・東京ミシュラン24時 0:01- の裏拍 
・AED  1:45- の裏拍、 2:10-の一小節の長い休符
・バックシートフェアウェル  2:57- の一拍あけ

このブレイクの瞬間、
齋藤里菜さんの声が印象的に響くんですよね。かなり効果的。



コードワークを見てみると、
0:40- のようなIV始まりって、メジャー感あってさわやかです。
アルバム全体でも、
サブドミナント(IV)を長めに弾いて、トニック(I・IIIm・VIm)に動く
コードワークがいつもより意識的に用いられていると思います。

0:40-
ああ  笑いながら ああ       歌いながら
IV△7  I△7    IV△7      I△7

メジャーセブンスのちょっぴり切なげな青春感、
風通しの良い感じが胸キュンです。

・ホーミング・ユー  サビ  0:59-
・東京ミシュラン24時 Cメロ  2:07-
・AED  Aメロ 0:06-  サビ 0:39-  も、同じ雰囲気です。

相対性理論『シフォン主義』、タルトタタン『テトラッド』でも
ちらほらありますね。フレッシュ感あって気持ち良いです。



1:54-に、
ワンステップ溜めてから長2度上(+2)への移調(転調)があります。
このあいだのV6『GOLD』と同じ上げ方ですね。

アルバムの中で移調するのはここだけで、
そのほかは部分転調・借用和音すらもほとんど出てこないです。
シンプルで口ずさみやすい、ポップな曲作りを徹底していますよね。

AED と 東京ミシュラン24時でほんの一瞬だけ転調するので、
後でみてみましょう。



■3. 東京ミシュラン24時
ハナエさんの「変幻ジーザス」「インテリジェンス」に続く、天才ポップス。
TSUTAYAで視聴してて悶絶しました。
アホな歌詞もいいし、
ちょっぴりエフェクトかかったサビの歌唱がめちゃイイですよね。
チューブラーベルみたいな鐘の音もかわいい。

この曲調で、真部脩一にかなう人はいないと思います。
(真部さん以外に作っている人を見たことないです)



この曲のサビでは、
「変幻ジーザス」のサビでも使われた、
 ペンタトニックメロディ + 4536進行 + ギターのカッティング
という、
真部さんが生み出した中でも、最強の作曲作法が使われています。

一つ一つのテクニックの簡単さに比して、
不思議なくらい感動的に響くし、おそらく、方法の再現性もあるんですよね。
作曲する方は試しに真似してみてほしいです。

またどちらの曲も、西浦さんのドラムが入って完成しているので
ドラムパターンの組み方も決め手なのかもしれません。



この曲の、齋藤里菜さんの鼻声な感じが好き。
サビの1:12-「今夜は」眠れない のぶっきらぼうな発声がとてもいいです。
かわいい雑さ。

インタビューにもあった通り、曲によっての齋藤里菜さんの歌の上手さが
まちまちで面白いです。
この曲、明らかに慣れてて歌唱力ありますね。
アルバムの中でめきめき成長がわかる、って聴いたことないです。
2:07- Cパートのコーラスも美しいです。



この曲でも、モチーフが回帰するテクニックが使われています。
1:34-の齋藤里菜さんのコーラスが
2:24-のラストサビでも引用されて、きれいに重なります。
華やか。
この「数分越しの伏線回収」が好きなんですよね。



■4. バイ・バイ・ブラックボード

アルバムを何度も聴いていて、この曲が一番好きと感じます。
歌詞もきれいで、曲展開も、初めから終わりまでとても美しいですね。
演奏も歌唱も一番好き。



印象的なギターリフが延々と繰り返すなか、
西浦さんの演奏力にゆだねた曲展開が素晴らしいです。
一回目のAメロ0:17-と、二回目のAメロの1:37-、
さらに1:53-のドラムロールと、リズムが色鮮やかに変わっていきます。



サビでテンポチェンジが入ります。
テンポ(bpm)をとってみると、

前奏・Aメロ 0:00- bpm 111
サビ            0:50-   bpm  74

bpmがちょうど 2/3 倍 になっていますね。
時間でいうと、3/2 倍(= 1.5倍) に引き延ばされています。
こんな感じです。
もともとの16分音符を1単位とすると、1拍4個→1拍6個に伸びるのですね。

この曲のアウトロ 3:04-には、
前奏・Aメロのリフを、テンポの違うサビの上で、
テンポを変えずに演奏するという大ネタが組み込んであります。

上の図を見てみると、
もともとの16ビートでつくってあったギターリフは、
bpm74上では、24ビート(6連符)として聴こえるのがわかります。
かっこいい。

また、bmp111で3小節分のギターリフを引くと
bpm74の上では2小節分ピッタリで終わるので、
ポリリズムっぽく上手くハマって聞こえます。
かっこいい。



このアイデアを実現するため、西浦さんのドラムがとても細かく組まれています。
2:38-のサビのなかで、すでに6連符っぽいパターンを
予告で演奏しているのですよね。
この準備あっての3:04-です。ほんとに素晴らしい。。



Aメロとサビで、齋藤里菜さんの歌い方もガラッと変わっていますよね。
優しい歌い方と、強く深い歌い方。
サビの歌唱は、今までの真部ポップスでは無かった新しい表現です。

この曲の歌詞のように、
不特定多数のだれかを思って歌うとき、齋藤里菜さんのフラットな歌い方が
良くハマるように思いました。

青春感あっていい歌唱。
「不条理なyとf(x) そのカーブを超えて」って好き。



■5. 土星の環

聴けば聴くほど、じわじわと評価が上がってくる曲。めちゃイイ。
タイトルにもある2:59-「土星の環」 からの展開が熱いです。
「蘇生の弾丸」というフレーズも、なにかわからないけどかっこいい。
凄み。

先ほどのタメ・ブレイクの入れ方といい
「押してダメなら引いてみろ」を地でいくような
間引くアレンジがとてもうまいですよね。
盛り上げるための引き算。

「土星の環」からの、たった4小節の静寂のおかげで、
全体のポテンシャルが持ち上がる感じがします。
今の時代の、30秒・1分の試聴では見えにくいデザインだけれど、
通しで聴くとイイ曲、というのは大好きです。



コードワークは、この曲が最もシンプルで、
いつもの真部さん(進行田中さん)風のコード進行だけで組まれています。
たった2小節分のコードをずっと繰り返すことで、徐々に高まっていく。
いちばん中毒性がありそうな感触です。

前奏、Aメロ、サビ、間奏がすべて同じコード進行ですが、
アレンジとメロディーで上手く変化をつけています。

1:50-のところ、
エレキ・アコギ・シンセ・ベース・歌が一本ずつ違うフレーズを演奏していますね。
「ホーミング・ユー」でも紹介したポリフォニックな組まれ方で、
聴けば聴くほどじわじわ効いてきます。



サビのハモリは、
メロディーのレ(C#)に対して完全五度下と完全四度上のソ(F#)が使われていて、
ギターでは常にド(B)を引いてますね。
パワーコード・空虚五度という感じで、力強い響きです。

コードは簡単な繰り返しに見えるんですが、
メロディーやハモリを(ソ・ド・レ)で動かさず、ベースだけ動かすと
聴感では複雑なハーモニーになるんですね。
こういうイメージです。

bang bang   bang bang     bang bang      blow away
IV69            Vsus4            VIm7(11)      Iadd9

複雑なコードを直接使わずに、
コードとメロディーの位置関係を少しずつ変えて複雑な響きをとりだす、
というのが真部さんらしいテクニックです。



この曲では、ラスト3:30-から、
イントロのギターフレーズと
サビの「bang bang」のフレーズが重なるアレンジが施されていますね。



■6. AED

シンプルなメロディーを、アレンジ力・演奏力で鮮やかに飾る曲。
雰囲気は、タルトタタンの「サイバーサバイバー」を彷彿とさせます。

繰り返されるAメロをすべて違うアレンジで演奏する、
という面白いアイデアが使われています。
プチ変奏曲という感じですね。

1回目 0:06- シンプルなコード演奏
2回目 0:28- シンセ追加、ベースが旋律的に動く
3回目 1:13- 16ビートの細かいカッティング
4回目 1:59- 1回目の再現 + 4度のハモリがつく

最後の4度のハモリ、いかにも真部さんな雰囲気です。
ふつう、4度のハモリはポップスに使うと変に聴こえるので
やらない方がいいんですが、
ペンタトニックメロディーとの相性は、例外的にとても良いんですよね。
空虚な異国感があふれます。



特徴的な和音を見てみると、

冒頭0:00の強烈な印象のコードは、
E(b5)  [V(b5)] かなと思います。

構成音のEとBb がトライトーン(減五度)をつくるので、とても不安定。
エマージェンシーな雰囲気がよく出ていますよね。
まさにAED。



2:33-に、一瞬の部分転調(借用和音)が出てきます。

AED for your heart    AED for your soul
G△7(9,13)
bVII△7(9,13)  (→IV調のIV)

AED for your heart     AED for your soul
F#m7                       Bm7(11)
VIm7                        IIm7(11)

完全4度上(下属調)からの借用です。
作曲作法としては珍しくないですが、
アルバム通して転調が使われるタイミングがごく僅かなので、
ここだけパッと世界が変わった感じがしますね。とても効果的。

部分転調していても、メロディーは変わっていないところがポイントです。
ペンタトニックスケールは、調が少し変わったくらいでは破綻しないので、
借用和音の上でもちゃんと同じメロディーが使えます。
頼れるペンタトニック。



この曲では、間奏0:50-のスネア連打の特徴的なドラムパターンが、
ラストのサビ2:56-で回帰します。
こんな風に、リズムを再現させることもあるんですね。
エンディングに向けて駆け抜ける感じがかっこいい。



■7. バックシート・フェアウェル
いい歌。。いいプロモ。
アルバムの中では最も長尺の5分の曲。
盛り上がり曲線のきれいなデザインです。

真部さんは短くてシンプルな曲を得意としていますが、
長尺のアレンジがとても上手いと思います。
ハナエさんの「S-T-A-R-S」とかVampilliaの「mirror mirror」とか。

印象的なギターのフレーズ(CMソング)、冒頭では出てこなくて
0:38-で遅れて出てくるのがグッときますね。



韻を踏んでいる歌詞について、
(動画0:13-) タクシー、爆心地、バックシート で始まって、
すっかり忘れたころに
(動画2:14-) 照れ隠し、暗くし で押韻が続いているというのがとても好き。
こんなに遠距離でもつながるんですね。



最後のサビ(動画3:55-) で、
サビのメロディー「行きたいときは」に添えて、
ギターが「1メーターって何km?」を再現して演奏しています。
知っているフレーズ同士が重なって、違う響きになるのは楽しいです。

アルバム通してみていくと、
「曲中引用」というようなアレンジが多く出てくるのがわかりますよね。
歌だったり、ギターフレーズだったり、リズムだったり様々です。

もっと広くとらえれば、
真部さんの歌詞にでてくる特徴的な押韻も、
韻律がこまかく回帰しているといえるかもしれません。

繰り返しとか、回帰とか、組み換えとか、
そういうのにロマンを感じます。



曲の最後に
モーダルインターチェンジ(短3度下への部分転調・借用)があります。

さようなら  "back  seat     farewell"
Iadd9          bVI                bVII7(b13)        Iadd9

転調がほどんど出てこないアルバムの中で、
最後にこの意外性のあるハーモニーが登場します。かっこいい。

bVI → bVII → I は、J-POPだとよく使われるコードワークですが、
普段のシンプルな引き算の作曲に混じると、
盲点を突かれたように強烈に響くのですよね。

メロディーもペンタトニックではなく、通常の7音音階に変わるので
急に目の前がひらける感触がします。

ここ、歌い方も凛々しくてかっこいいし、
跳ねるドラムもカッコイイ。
大団円感あります。


*************

一曲一曲に聴きどころ・フックがあって、いいアルバム。

つぶさに書いてみましたが、実際に音源聴いてるときには、
どの音符がどうとか一切考えず、
「この曲スーパー好きー」とにやにやしてます。

なんかツボなバンド、集団行動。
何度聴いても口元緩みます。

集団行動で嬉しいのは、これがまだ初期バージョンだということ。
これからメンバーが増えたり、齋藤里菜さんが進化したり
さらに新しい音楽が生まれる余地があって、めちゃ楽しみです。


■過去記事

ざっき。バンド「集団行動」のライブ観ました
真部脩一(ex. 相対性理論) のペンタトニックスケールを解析してみよう
ハナエ・真部脩一の「上京証拠」をみつけよう
真部脩一/Vampillia のアルバム「the divine move」 を聴いて。
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