アニソンを中心にキャッチーで複雑な曲を数多く手がけられており、
神前暁さんに並ぶヒットメーカーとなっています。
リクエストがありましたので、
今回は田中さんのコードワークについて書いてみます。
盛りだくさん過ぎて説明しきれませんので、
田中さんの曲によく登場するコードを 3個に絞って紹介します。
① IIIm7-5
② #IVm7-5
③ ♭III dim7
なんだか難しそうなので、音を聴いて響きでおぼえてみましょう。
話半分で読んでみてください。
16/04/17 追記
MONACA神前暁さんのコードワークについて書きました。
◆神前暁「chocolate insomnia」でコードの転回形を覚えよう
http://kaho-ss.blogspot.jp/2016/04/chocolate-insomnia.html
◆田中秀和さんのオーグメントコードを聴いてみよう
http://kaho-ss.blogspot.jp/2014/12/blog-post_7.html
(追記) さらに新しい記事を書きました。
http://kaho-ss.blogspot.jp/2017/01/blog-post_9.html
↓
① IIIm7-5 ( 別表記:IIIm7 (b5) )
「マイナーセブンスフラットファイブ」「ハーフディミニッシュ」と呼ばれるコードです。
名前かっこいいですね。
通常の作曲では IIIm7 (ミ・ソ・シ・レ) というコードを使いますが、
ここぞというところで IIIm7-5 (ミ・ソ・bシ・レ) に変化させて用います。
このコードを多用される方は珍しいので、
一番「田中さんっぽい!」と感じるのがこのコードです。
とても切なげな和音になります。
以下、使い方がわかりやすそうなものをピックアップします。
◆例1: Let's アイカツ
ハー トのチャイムならし て てわたすよー
IV△7 V IIIm7-5 VI7
◆例2:LUCKY DUCKY!!
ラッキー ガール せかいじゅう を ー
IIm7 V IIIm7-5 VI7
◆例3:オリジナルスター☆彡
1:19-
いつか ぜったい じぶんとの やくそくIV△7 V IIIm7-5 VI7
◆例4:Good morning my dream
0:28-
でかけよう あたらしいふくに
IIIm7-5 VI7(b9)
使い方にも共通点が感じられますね。
王道進行(IV V III VI) に組み込むのが、田中さんっぽい使い方です。
② #IVm7-5 ( 別表記:#IVm7 (b5) )
先ほどの①と同じく、ハーフディミニッシュコードです。
通常の作曲では IV△7 (ファ・ラ・ド・ミ) とするところを
盛り上げたいところで #IVm7-5(#ファ・ラ・ド・ミ) に置き換えます。
田中さんの曲では再頻出のコードで、近作のほとんどに登場します。
サビのど真ん中に使ったり、ちょっとしたつなぎに使ったり
凝ったポップスには必要不可欠な存在です。
◆例1: Let's アイカツ
きみにスマイ ル あしたに ゆ め
#IVm7-5 VII7 IIIm7 VI7
◆例2: カレンダーガール
1:19-
あれ ー まえむき に ー
#IVm7-5 IV△7 IIIm7 VI7 ◆例3: Colorful Days
ないから このしゅんかんが き せ き
#IVm7-5 IV△7 IIIm7 VI7
サビ後半は #IVm7-5 に置き換える、というのが田中さん風です。
③ ♭IIIdim7
ディミニッシュコードと呼ばれるコードです。
♭III dim7 (bミ・bソ・ラ・ド) という短3度に積み上げた、普通じゃないコードです。
不気味な美しさがあり、上手く使うととびきりおしゃれな音になります。
登場した瞬間に、その響きの意外性にドキッとさせられます。
◆Colorful Days
1:09-
しあわせなじかん しあわせにつづく
I / III bIII dim7
◆めいあいへるぷゆー?
ゆうこうてきなけんかいで おおむね ハッピーデイズ
IV△7 I / III bIII dim7 IIm7 V
◆あっぱれ!瞬間積極剤
なかよしー やだ てれる
IV△7 IIIm7 bIII dim7
ディミニッシュコードも、使い方に共通点があるのがわかると思います。
ベース音をミ→bミ と半音下げつつ、 I / III → bIIIdim7と使うのが定番です。
まとめ
最後の総まとめとして、
めちゃめちゃ高度な 「花ハ踊レヤいろはにほ」 を聴いてみます。
いままで紹介したコードが聴こえるか、サビ部分で確かめてみましょう。
◆花ハ踊レヤいろはにほ
0:51-
パーッとパーッと はれやかに さかせましょう はなのように
IV△7 IVm△7 IIIm7 bIIIdim7 (③)
これからの きみが みたい いろはにほ
IIm7 bVIaug VIm7 Vm7 Iaug
パーッとパーッと はれやかに さかせるおもいは つねなら む
#IVm7-5 (②) IVm△7 IIIm7-5 (①) IIIm7-5/VI VI7
(コードwikiより)
3種類ともサビに登場します。
それぞれの和音の感じがつかめたでしょうか?
今回の解説はたった3つのコードだけでしたが、
ここぞというところに組み込んでいるのがわかるかと思います。
他にも、今回触れていないaug、IVm△7など、難しめの和音が多数含まれています。
もし「花ハ踊レヤいろはにほ」のコードが全部聴き取れたら
世のポップスの9割9分は聴き取り出来ると思います。(僕はむりです)
田中さんのすごいところは、そんな複雑なコードを駆使しつつ、
神前さんと並ぶような王道の音を作っている、というところです。凄い。
*
田中秀和さんの作曲、ものすごく好みです。
それもそのはず、
僕の敬愛するLamp の作曲作法と、実はとても似ているんです。
ディミニッシュとオーグメントを駆使してキャッチーな音を作る人。
ファン層は全くかぶってないと思うのですが、
アニソンやインディーズに偏見ゼロの方であれば、
共通点が見いだせるかもしれません。
関連記事
◆田中秀和さんのスケールを聴いてみよう
http://kaho-ss.blogspot.jp/2017/01/blog-post_9.html
田中さんの魅力的なスケールワークについて。
◆田中秀和「PUNCH☆MIND☆HAPPINESS」の楽しいスケールワーク
https://kaho-ss.blogspot.jp/2017/11/punchmindhappiness.html
1曲の中でのスケールの使い分けを聴いてみます。
◆田中秀和さんのオーグメントコードを聴いてみよう (田中さん特集2)
http://kaho-ss.blogspot.jp/2014/12/blog-post_7.html
http://kaho-ss.blogspot.jp/2014/12/blog-post_7.html
今回は触れなかった、田中さんのオーグメント(aug)についてまとめました。
複雑で面白いコードです。
(16/01/15追記)
田中さんの転調についての記事です。
かっこよくて好み。
かっこよくて好み。
16/04/17
◆神前暁「chocolate insomnia」でコードの転回形を覚えよう
http://kaho-ss.blogspot.jp/2016/04/chocolate-insomnia.html
MONACA神前暁さんのコードワークについて書きました。
◆神前暁さんがつくる魅惑の「短3度転調」
http://kaho-ss.blogspot.jp/2014/09/3.html
この転調作法は定番なので、田中さんも用いることがあります。
◆Lampの名曲とディミニッシュコードの響き
http://kaho-ss.blogspot.jp/2015/02/lamp.html
ディミニッシュコードの響きをさらに聴きたい方はこちらをどうぞ。
◆「さち子」の作曲をみてみよう (Lamp「ゆめ」より)
http://kaho-ss.blogspot.jp/2014/02/lamp_16.html
コード感がとても良く似ているLampの記事です。
実は、今回取り上げたコードが数多く登場しています。
大変分かりやすい内容に感動しました。
返信削除>> 一番「田中さんっぽい!」と感じるのがこのコード
というのに頷きながら読んでました。確かに切なさを感じるコード進行が多いような。
以前のコメントでもおっしゃってましたが「花ハ踊レヤいろはにほ」は相当複雑なんですねえ。改めてコードを見てみると「田中さんらしさ」をこれでもかというくらい詰め込んだ感じで興味深いです。合いの手も相まって聴いた瞬間分かりますよね。
わざわざリクエストお答え頂きありがとうございます。これからも更新楽しみにしております。実はこのブログを拝読しているのにも関わらずLampを聴いていなかったのでチェックしておきます!
yozさんこんにちは。お読みいただきありがとうございます。
返信削除やはり曲を並べてみると、田中さんの曲は幾つもの「田中節」で溢れていて、
もしノンクレジットでも誰が作ったのか分かりそうです。
「花ハ踊レヤ…」までくると、過去の音楽に類を見ないくらい独創的ですし。
一聴してすぐに作者がわかる、というのはとても魅力的ですね。
作風の幅広さも大事ですが、作者自身が「これを聴かせたい!」という軸をもっているようなものはグッと来ます。
リクエスト頂いたこの機会で、また勉強になりました。ありがとうございます。
Lampは、
相対性理論(やくしまるえつこ+真部脩一)のような声質と、
田中秀和さんのようなコード感がある素敵なバンドなので、yozさんはもしかしたらお好きかもしれませんね。
ぜひ聴いてみて下さい。