2012/08/18

筒井康隆「ビアンカ・オーバースタディ」に騙されよう

筒井康隆さんの新作小説「ビアンカ・オーバースタディ」が発売です。

騙されたと思って買ってみましょう。
そうしたら、やっぱり騙された! と思うはずです。

冒頭がこちらで読めますが、前知識なしで読むと絶句するような内容です。





以下、感想です。






・天才的アホ。知的で痴的。そんな感想が浮かびます。
ライトノベルかどうかはわからないけれど、持ち前の「軽やかさ」が存分に発揮されています。

・遺伝子操作をテーマにしたSF作品(とも読めます)。
筒井さんは以前に、『iPS細胞 世紀の発見が医療を変える』(八代嘉美 著)の推薦文を
書いておられたのもあるので、ここらへん得意そうです。

・出てくるキャラクターは、揃いもそろってクズばっかりです。
   - 倫理観・デリカシーのかけらもない主人公ビアンカ
   - ナチュラルに重犯罪をやってのけるヤンキー耀子
   - 本編と関係なくビアンカの妹にセクハラする男性陣
など、読者の度肝を抜くキャラ設定が盛り沢山です。
むちゃくちゃなようで、読んでいるとどこか憎めない、筒井さんらしいキャラクターです。

・この作品を筒井ファンが読むと、
  - 「ダンシング・ヴァニティ」だ。
  - 「インタビューイ」の山田照子だ。
  - 「痛いいたい痛い」が懐かしい。
  - 最後の主人公のセリフは、あの作品そのままだ。
と、思い当たるところが多いはずです。ちょっと嬉しい。





もし筒井康隆さんの他の作品に興味が湧いたら。
著作数は100冊以上ありますが、誇張なしで全作品面白いですよ。
どれ読んでも当たりです。

オススメは以下。

・『驚愕の曠野
  年長のおねえさんが、子供たちに向け、長いながい物語を読み聞かせている。
  物語は、第332巻に差し掛かる。
  曠野をあてども無くさまよう人々の遍歴が、淡々と語られる。

軽い気持ちで読み進めるうち、驚愕して、その場で即座に再読してしまった作品です。
世の中の全ての小説を見渡しても、本作が頭ひとつ抜けて面白いです。
20回以上読んだのですが、なぜここまで惹かれるか自分でもわからない。

読む度に、こんな作品が書けるわけがない、と唸ってしまう出色の出来栄えです。
重厚で多層的な物語空間も、猫/雷/女性の関係性も、塩肉も、巨大なまだら蚊も、
後半の実験小説的手法も。
あまりにも超越的な発想に過ぎる。オーパーツのようにみえます。

余談ですが
Kaho というハンドルネームは、この作品の登場人物からとってます。そのくらい好き。
こういうのが作れたらな、という願いも込めて。

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