2020/01/27

惹かれるポップ・ミュージック (20/01/27)

こんにちは。すてきな曲を聴きます。
今回は、聴き取りが多めになりました。お時間あるときにどうぞ。

1. SAKA-SAMA - 空耳かもしれない
2. 高垣楓(cv.早見沙織) - Blessing
3. Toninho Horta & Fernando Brant - Aqui, Oh!
4. nuance - ハーバームーン
5. NIHONGO DANCE - KENDO
6. Candra Darusman Feat. Andien - Pengungkapan Hatimu
7. 原田茶飯事 - 終末のドライブ
8. 中山うり - カルデラの子
9. Lee Jin-Ah - Again and Again
10. Lee Jin-Ah - Yum yum yum (Rebooted Ver.)

■1. SAKA-SAMA - 空耳かもしれない

作曲はbjons(ビョーンズ)の今泉雄貴さん。
前作「デジタル・リレーション」に続き、素敵な提供曲に感動しました。
シンセベースが根音を避けて、転回形のゆるっとした響きが続く曲です。
SAKA-SAMAの素朴な歌声にときめきます。

0:56- 「わたしたちは とっても似ている」のメロディ良いですよね。
「似」の半音の動きがめちゃ綺麗です。

AメロBメロはEb調、サビで滑らかにAb調に下属調転調(+5)します。綺麗。
サビ終わりの展開もめっちゃ凄いですね。。

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1:27-  (key = Ab)
楽しい   ねって、    頬を           つねって 
IIIm7    VIm7        bIIIm7b5       VIIalt
                            (bIII ロクリアン)    (VIIオルタード)

あなたの思い出     に                 なりた    い
IV6                     V7sus4(13)     V           I

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こんな感じでしょうか。わからんです。
複雑な和音なのに、メロディは臨時記号少なく、自然に歌えます。
スケール上を優雅に波乗りしていて、惚れ惚れしました。

VII7をVIIalt (≒Vaug7)にしてあるのは、
VIIオルタードスケールのb9(ド)・b13(ソ)を
メロディとして使うためなんですね。歌いやすいです。

bIIIm7b5 の解釈はどう考えるのがいいでしょうか?
IIm7b5 の半ずれコードとしてみるか、
#IVdim (#IVmb5)の代理としてみるか、、

ここ以外も、面白すぎてわからん響きがいっぱい詰まった曲です。
何回も聴きたくなりますね。

以下、続きます



■2. 高垣楓(cv.早見沙織) - Blessing
フル版買って聴きました。
感動しました! 素晴らしい曲がまたひとつ。
細部まで美しい演奏、歌唱です。早見沙織さんはすごい。
歌詞も穏やかで綺麗。

上記の試聴音源にはありませんが、中盤の間奏部分が格別に美しいです。。
作曲者の田中秀和さんご本人の解説動画で、
ブラジルのミナス音楽を意識されたということで、雰囲気わかりますね。

ここの間奏、軽い気持ちで聴きとろうとしたら、難しくて難しくて。
譜面化しないと表現できなそうな和声ですが、無理やり文章で書いてみます。
以下は間違いだらけと思いますので、話半分でお読みください。

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【間奏 1:44-】順番に8つのコードが出てきます。(カッコ内はスケール)
key E
① IIm7(9,11)         (II ドリアン)
② Vaug7(#11)       (V ホールトーン)
③ I△7           (I リディアン)
④ VI7(9) → VI(b9)  (メロ:ホールトーン+M6th フルート:VI HMP5B )
⑤ IIm7(9,11)         (II ドリアン)
⑥ V7(#11)             (V ホールトーン)
⑦ IIIaug7        (メロ:III ホールトーン フルート:クロマチック)
⑧ VIm7 →VI7   (VIオルタード → ミクソリディアンb6)
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・②④⑥⑦⑧はホールトーンスケールの味わいが強いです。

・③はアイオニアン(メジャー)スケールの代わりにリディアン。おしゃれ。

・④は真逆なスケールが共存していますが、音域・パン・タイミング・音色を
うまくずらして成立させているんですね。。
 ④1:51- VI7上で 旋律は
 フルート: ミ      レ      シb    ラ     ソ
 メロ: ラ     ソ       シ        ラ    ド#
 ハモ: ファ     ミb     ソb       ファ    ラ

メロディーとハモリはおおむねホールトーンスケールですが
経過的にソb(=♮13th, M6th, 実音でBb)が出てきます。
(ホールトーンにもHMP5Bにも含まれない音です)

VIホールトーン+M6th は、真面目にスケール名でいうと
VIリディアンb7#5(VIリディアンドミナントオーグメント)でしょうか。
メジャーロクリアンスケールの第三モードっぽいです。)


・⑧ の頭の2音(smi・ling)は、メロ・ハモリ・ピアノがオルタードスケール上の
トライアドになっていて、下方に動いているようですね。
(Im / VIm7  →  bVIIm / VIm7  ポリコードっぽく)
その後の3音(you・and・me)はホールトーンっぽく動きます。
(一方でフルートが、ホールトーンスケール外のP5thを鳴らすので、
 ホールトーンよりはミクソリディアンb6で書いたほうがよさそうです)

難しいです……
でも聴いた感じは、丁寧に整理されていて綺麗ですよね。凄い。



2:02-は、サビのリハーモナイズがめちゃめちゃ綺麗ですね。
「グローリーデイズ」のところの変化が格別に美しいです。

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【2:02-】 key E (カッコはスケール)

あな      たと        つむ      いだ  
II7sus4       IIIaug7 / #V     VIm7(#11)     Vsus4
 
グローリーデイズ
★IIadd9 / #IV   (IIリディアンb7  = #IV エオリアンb5)
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    グロー リー デイズ
メロ: ミ      ソ#      シ
ハモ: ド    ミ        ソ#

元の1サビの旋律と比べると、ソがソ#に変化しており、鳥肌たつ美しさです。
メロディーとハモりの構成音はIaug△7(ド ミ ソ# シ)を感じさせます。
オケのメジャーコードと重なって、ポリコードのような装い。

オケとメロディーをすべて含めると、ここの和音は
II7(9,#11,13) / #IV の響きになっていますね。(omitは無しです)

ここまで複雑に組んでも、聴感ではするするっと耳に入ってきて
心地よい感触がするのは、離れ業ですね。
圧巻の作品だと思います。



■3. Toninho Horta & Fernando Brant - Aqui, Oh!

先のblessingの解説動画で、ミナスの「変わったボサノバ」の話がありました。
こういう感じの雰囲気かなと思います。
ブラジル・ミナスジェライス出身の音楽家、トニーニョ・オルタの作品。

16分音符の裏拍を歌う感じ、半音で移り行く和音の感じが楽しいです。
ギターの不思議な半音上行、半音下行が綺麗ですね。
歌詞を聞くと、冒頭から「おー  ミナスジェライス~♪」って歌ってます。

ミナスの音楽は、アーティストごとで作風バラバラなので、
共通点を括るのが難しいのですが、なんとなく複雑で綺麗な感触はわかりますね。

関連記事
ブラジル・ミナス音楽の複雑でキュートな響き

→ 僕はトニーニョ・オルタが好きです。特に1st・2ndアルバムが凄いですね。
1stはサブスクでも聴けるのでぜひ聞いてみてください。
(名義は 「Toninho Horta & Orquestra Fantasma」で、
 アルバム名は「Terra dos Pássaros」です)
残念ながら2ndの配信はないようです。

(追記)
Lampの染谷大陽さんがまとめられた、70年代ブラジル音楽のプレイリスト
Trip to 70’s in Brazil on Spotify
がとても素敵で、ミナスのものも含めて
ブラジル音楽を初めて聴くのにピッタリだと思います。
(僕も初めて聴く曲ばかりです。嬉しい。)
染谷さんによる各曲の紹介ページはこちらです


■4. nuance - ハーバームーン

佐藤嘉風(さとうかふう)さんプロデュースのnuance新曲です。超かっこいい。
0:53- サビ聴くと、不思議と佐藤さんの作曲ってわかりますね。
オクターブユニゾンも含めて4声のコーラスかと思います。ぶ厚くてかっこいい。

佐藤嘉風さんは、真部脩一さんにも通じる感覚をお持ちの方と感じています。
佐藤さんの方がより難しめでテクニカルですが、
システマチックな作り方が共通しているように思います。好き。

メロディの感じ(ペンタトニックな傾向)とか、
2小節単位でコード循環させたりとか。
IV - V - VIm とか、IV - IIIm - VImとか
VIm - V - IV - V  とか、端的なコードをメインエンジンになさってますね。



■5. NIHONGO DANCE - KENDO
NIHONGO DANCEは、Gt.佐藤嘉風さん、Pf.斉藤渉さん、Dr. Uさんの3人バンド。
「日本語の響きで世界を踊らせる」のがバンドのテーマだそうで。
テーマ通りのわくわくする楽曲がいっぱいです。

先ほどの曲と合わせて2曲きくだけでも
佐藤さんの曲の独特な風合いがわかりますよね。めちゃツボです。
何かしら「佐藤嘉風システム」が機能している感じしますね。

初めて聞いた時、1:08- でまさかこういう和音がくると思っていなくて、
うわっ  て声出ました。超かっこいいです。



nuanceやNIHONGO DANCEのほか、
佐藤嘉風さんのソロ名義の楽曲もサブスクで聴けるので、ぜひ聴いてみてください。
(佐藤さんのアルバムは、SpotifyとApple Musicだと
 Apple Musicの方がラインナップ多いです! こういうこともあるんですね)
(追記) どちらでも同じように聴けました。
 Spotifyの場合、佐藤嘉風さんのアーティストページが2つに分かれていて、
 2つ合わせればたくさん聞けます。気づかず失礼しました。

過去のソロ楽曲をお聞きすると、
もともと、どんな曲調でも書きこなすオールラウンダーな方かと思いますが
近作ほど、新奇でピンポイントな作曲作法の発明が進んでいて
聴いててときめきます。



■6. Candra Darusman Feat. Andien - Pengungkapan Hatimu

心ほっこりする、めっちゃ素敵なデュエットですね。 
インドネシアのベテラン音楽家 Candra Darusman(チャンドラ・ダルスマン)の
洒脱なポップス作品です。

イントロの「ソ・ミー・ソ・ミー」のフルートのフレーズが、
1:15- サビのメロディとして帰ってきます。美しいです。
1:44- トランペットとピアノのユニゾン → 途中からフルート。
2:25- 2サビはストリングスが強調されて綺麗です。
3:29- 最後の一音でひねって部分転調するのも好き。

最近インドネシアの曲を少しずつ聴いていて、ダルスマンもお気に入りです。
ポップでかわいい曲ばかり。



■7. 原田茶飯事 - 終末のドライブ
コメントで教えていただいた原田茶飯事さん。
自分の好みにピッタリで、少しずつ聴いてます。

冒頭からコーラスが綺麗でときめきますが、
1:19- とにかく、サビのビブラスラップが超カッコイイです!
こういうゆったりした曲調のなかでも、使い方次第で美しく響くのですね。
自分の中での「色物楽器」っぽい印象が、見事に打ち砕かれました。

端的なMVも、アイデアを引き立てていてカッコいいですよね。
1:15- ノールックのビブラスラップ受け取りがツボです。

要所要所のコーラスも美しく、
一点突破のアイデアも見事にきまった佳曲だと思います。



■8. 中山うり - カルデラの子

中山うりさん。昨年アルバムをずっと聴いてました。
室内楽っぽく丁寧に編まれたアレンジと、
耳馴染みの良いペンタトニックなメロディーがとても素敵です。
嬉しいことにサブスクでいっぱい聴けるので、ぜひぜひ聞いてみて下さい。

「カルデラの子」はペンタトニックスケールの旋律が親しみやすい楽曲。
こういうメロディ良いですねー。
「ぼーくはカルデラーのーこー」ってすぐ歌えるようになります。
Aメロ・サビだけのシンプルな構成も好き。



■9. Lee Jin-Ah - Again and Again

韓国のシンガーソングライター、イ・ジナ。
ぶりっこ可愛い声と、巧みな作曲・演奏のバランスが好き。

イ・ジナさんの曲には「あざといポイント」があり、とても好き。
この曲だと、冒頭のとぅとぅとぅとぅとぅとぅとぅのスキャット。かわいい。
スケールの細かい変化が気持ちいいですね。

甘い歌声がシュガーコートになってますが、
作曲は綺麗に複雑に組まれています。耳がうれしい。
上手すぎて何度も聴きたくなってしまいます。



■10. Lee Jin-Ah - Yum yum yum (Rebooted Ver.)

こちらも、一聴してかわいいポップスに聞こえるのですが、
作曲もアレンジも凝りに凝ってて恐ろしいです。

サビ0:52- の やんみゃんみゃんみゃんみゃん♪ が
あざといポイントです。カワイイ。
アレンジも見事で、よく聞くと0:58-でベースの半音下行が凝ってて綺麗。

2:26- イントロが回帰してイ・ジナの鍵盤ソロが始まります。
3:19- ここら辺から複雑さが増しはじめ、
3:29- ラストサビはピアノ・電子音・コーラスが絡み合って
めちゃ複雑なアレンジですね。。凄い。
4:00-  ダメ押しのコーラスが綺麗です。

複雑さとキャッチーさは相反するものではなくて、
複雑だからこそ可愛い、みたいなものが作れるんですよね。
相乗効果が出ていて素晴らしいです。


***

今年も良い曲いっぱい聴けるといいですね。

おまけで、ちょっと裏技なのですが
「blessing」の音源お持ちの方は、
「歌声りっぷ」とかで、ボーカル抽出音源作って聴くのもおすすめです。

サビの3声のコーラスワークがきれいできれいで。。
田中秀和さんも、それを見事に歌う早見沙織さんも素晴らしいです。

2 件のコメント:

  1. こんにちは!いつも拝見しております。
    君に、胸キュン。のアレンジで有名な依田和夫さんのアルバムにある「ピンポン」という曲をオススメします。
    https://open.spotify.com/track/1p8XyqQwJCtiPJrCx1BgBH?si=p6ID2nqUQp2pLrXwo7PVgw

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  2. こんにちは。いつもお読みいただきありがとうございます。

    曲のご紹介ありがとうございます。依田さんの「ピンポン」聴いてみました。ハッピーな曲ですね! ピンポン♪の工夫も楽しいです。
    どの曲も、動き回るシンセベースの感じがいいですね。

    このアルバムだと、「女木島ロマンス」が抜群に好きです。依田さんの独特なシンセベースの魅力が一番出ていると感じました。

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