2015/01/25

エルメート・パスコアール(Hermeto Pascoal)の楽しい曲想

エルメート・パスコアール(パスコアル)は、ブラジルの天才作曲家/演奏家です。

こんな方です。
■1. Hermeto Pascoal & Aline Morena - Mudança
アルビノ由来の白髪・白髭が印象的な、天才おじいさんです。

鍵盤・ギター・管・パーカッションをはじめ、どんな楽器も弾きこなし、
どんな和音も、どんなリズムも操れる人。
0:50-のトライアングルがかっこいい。
演奏テクニック、溢れる作曲能力を全て「音楽の楽しさ」にぶつけています。

この動画でピアノと歌を担当しているのは、
エルメート・パスコアールの奥さんであるアリーニ・モレーナ(Aline Morena)。
近年は2人3脚で楽しい音楽を作られています。



無調っぽく難しいハーモニーも、複雑な変拍子も、しゃべり声も自然音も、
エルメート・パスコアールが扱えば、
途端に楽しいサウンドに変わります。

音楽作法や風貌からして、
彼は音楽のサンタクロースかも、と思いました。

以下、エルメート・パスコアールの作品の中で、
僕の好みなものを並べてみました。
遊び満載ですので、ぜひ聴いてみてください。


■2. Hermeto Pascoal - Suite Norte, Sul, Leste, Oeste
エルメート・パスコアールの作品でも、特に大好きな曲。 (以前にも紹介しました)
彼の魅力は、凝った和声と、凝ったリズム、
そして何よりも、一聴しただけで虜になるキャッチーなテーマ。
1:30- のフルートの旋律が大好きです。


■3. Hermeto Pascoal e Grupo - Taynara
遊びが溢れる素晴らしい音楽。
この曲は7拍子なのに、なぜこんなに自然で聴きやすいんでしょうか。
0:29- てれってってってってってって ピー
1:08- ここまで単音で我慢していたベースがめちゃめちゃ格好いい動きをします。
綺麗に絡むテーマメロディーとベース。感動的。


■4. Sergio Mendes - Pipoca (Hermeto Pascoal)
セルジオ・メンデスへの提供曲。ああ! いい曲!
こんなポップな音聴いたことない。
ノラ・サルモリアによるカバー版もメチャメチャ好き! 感動します。
https://www.youtube.com/watch?v=xoqWK4PH62M
彼女もパスコアールのフォロワーです。


■5. Flora Purim - Conversation (Hermeto Pascoal)
こちらもパスコアール提供曲。珠玉の3拍子。
どうしてこんなに素敵なメロディーが書けるんでしょう。
1:03- の2声がずれて始まって、徐々に重なる所がとても好き。
Conversation = 対話というタイトルも、曲にピッタリです。


■6. Hermeto Pascoal - Feira de Asakusa (Asakusa Market)
浅草の物売りの声?
と思って聞いていると、最後にびっくりさせられます。
そういうことか。凄すぎる。

エルメート・パスコアールは子供の頃から
人の話し声が、まるで歌っているように聞こえたといいます。



彼の作法は、
音をSEとしてつかう普通のフィールドレコーディングとは異なる思想に基づくようです。
むしろオリヴィエ・メシアンの行った鳥の歌の採譜のように、「音符」をあつめる。
世界は歌に満ちているんですね。

(スティーブ・ライヒ「Different Trains」のようなミニマルな使い方とも違いますね。
パスコアール作品は、話し声がコード上でアドリブしているような感じを受けます。)


■7. Hermeto Pascoal e Grupo - Renan

かっこよすぎて笑える曲。
冒頭が訳わからんので、どんな曲だろうと心配していると、
0:23- 異常にかっこいいメロディーが登場します。わー。
2:01- 何だろうこの音作り。信じられない。


■8. Hermeto Pascoal - O Farol Que Nos Guia
最後にこちら。
エルメート・パスコアールが手がけたなかでも、最も美しいメロディーだと思います。
ところどころ信じられない展開があります。
1:49- の着地とか。
2:09- の跳躍とか。
4:11- 最後のボーカルの♭5音が綺麗すぎてうるうるきます……。

おそらく、♭5音を印象的に響かせるために、
あえて「5 → ♭5」 と1拍分遅らせてから差し込んでいるんですね。
心底素晴らしいです。


****

以上、エルメート・パスコアールの音楽を紹介しました。
補足です。

・より詳しく知りたい方は
下記のディスクレビューが素晴らしくまとまっており、たいへんオススメです。
http://www5.plala.or.jp/ysk/pascoal-leader.html

僕がよく聴くのは、
Hermeto Pascoal e Grupo「Mundo Verde Esperança」というアルバムです。
けっこう無調な音も多いので、試聴してみてください。
(iTunesでも買えます)


・また、下記動画も、彼の人となりを知る上でおすすめです。
Hermeto - Central Park 1 怪しいサンタさん。3:01-のスキャットが超かっこ良いです。
Hermeto - Central Park 2 彼の音楽観について。
内容を抜き書きすると、

 " 純粋な音楽というのは
  ハーモニー リズム そして テーマでできている
  1つも欠けていてはいけないんだ

  ハーモニーが母 リズムは父 その子どもがテーマ
  ハーモニーとリズムが 一緒になり
  愛し合って テーマをこの世に生み出す

  音楽は家族といっしょ "


音楽を極めた人が、ここまで優しい言葉で語れるものでしょうか。
素敵です。
ハーモニーからテーマが生まれる、という順序からすると、
ポリフォニーよりもホモフォニーを重視されているのだと思います。



・本気で聴いてみたい方は
こちらの1時間30分のライブ映像をどうぞ。一瞬で見終わってしまいます。
Hermeto Pascoal Jazz sous les Pommiers 2012

お時間無い方は
中間部あたりオススメです。

31:18- 超難しいコール&レスポンス1
34:33- パーカッションが楽しいタイム
39:20- 奥さんが可愛いタイム
44:15- 超難しいコール&レスポンス2


・過去記事
南米アルゼンチン・ブラジルの音楽を少しずつ聴いています。

■ノラ・サルモリア(Nora Sarmoria) のときめく曲想
http://kaho-ss.blogspot.jp/2014/12/nora-sarmoria.html

パスコアールのように奔放で、優しい音楽を作る方。


■カルロス・アギーレ(Carlos Aguirre) の音楽はジャンルを超えて
http://kaho-ss.blogspot.jp/2014/06/carlos-aguirre.html

丁寧で透き通った音楽を書く方。

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