2015/01/12

新川忠さんの3rdアルバム「Paintings of Lights」買いました

新川忠さんの3rdアルバム「Paintings of Lights」を買いました。

Lampの主宰するレーベル「Botanical House」の第1弾作品です。
ちょっと聴いた感想をメモ。

■新川忠 - アイリス

MVは榊原香保里さんのディレクション。

■新川忠 - カミーユ・クローデル


この曲を聴いて、あっ と思う人は、買って間違いないです。
以下、続きます。



作品の制作意図などは
ご本人のインタビュー記事に詳しくありました。とてもおもしろい。

■新川忠 OTOTOYインタビュー
http://ototoy.jp/feature/20150111



以下聴いた感想です。

「カミーユ・クローデル」でわかるように、
アルバム通して風変わりな音で出来ています。

しかし、聴いている間は、その風変わりさは息を潜めてゆき
すぐに「普通」に感じられるようになります。
このアルバムの中だけで成り立っている普通。

アルバムのどこを切り取っても、ルール(作曲作法や音源)が一貫しているため
聴いてて別世界に取り込まれる感じがあります。
一度も素に戻らない。



夢の中だけで成り立つ奇妙な論理ってありますね。
ルイス・キャロル「不思議の国のアリス」を読んでいる時の心地に近いです。
ハイ・ラマズの抜け出せない感じにも似ています。

現実の規則や普段の生活観が見えてこないので、
正直、これは「あの世の音楽」ではないのかと思いました。
(けれど、ゆったりと楽しく聞こえます)

新川さんが全てをひとりで、同じ環境で作ったからこそだと思いますが、
その矛盾のなさが凄みを生んでいます。



今作は80年代への憧憬に溢れた音で、
僕のように80年代がわからない人は、むしろ偏見なく好きになるかもしれません。
tofubeatsさんとかパスピエとか、この音選びが格好良いと感じる人がいると思います。

もしくは、小さいころからパソコンで音楽を作り始めた人たち。
MIDI音源に馴染みがある人にとっては、この無機質な音が好ましく思うかも。

■新川忠 - アイリス

全員に聴いてほしいというよりも、
音源を試聴してピンときた人に、ピンポイントでおすすめします。
きっとその直感は正しいので。


****


以下、とても余談です。

このアルバムを聴いていて、「エデンの園配置」という言葉が浮かびました。

・エデンの園配置
http://www.wikiwand.com/ja/%E3%82%A8%E3%83%87%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%9C%92%E9%85%8D%E7%BD%AE

数学のセル・オートマトンで用いられる用語で、
「ほかのパターンからでは決して到達できない配置」といった意味です。

このアルバムは80年代音楽から導かれた、ということですが、
単純な延長上にあるというよりも、
新川さんの考える「存在し得なかった、理想上の80年代」が生み出したもの
という印象を持ちました。

80年代「風」ではあるけれど、80年代のものを組み替えるだけでは
決して到達できない配置(エデンの園配置)になっているような。



新川さんは、フィルタリング・抽象化能力が高いのだろう、と思いました。
それも、単純に高いというより、フィルターの形が独創的という感じです。
ものの受け止め方が他の人とちがう。

変なフィルターを抜けて、変なものが抽出されるだけでは面白くありませんが、
新川さんを通過したものは、変でいて、かつそこに論理が通っている。
夢の中の整合性にも似て。
そこに感動します。

「Paintings of Lights」は
夢の中の論理を想起させるような
Lampの「ゆめ」以上に「ゆめ」を感じるアルバムです。

この音づくりを面白いと思う方にオススメです。
いっぱい書きましたが、単純に歌声に惚れるというのがありますね……。
声が素敵です。


過去記事:
■Lamp「ゆめ」買いました
http://kaho-ss.blogspot.jp/2014/02/lamp.html

Botanical Houseというレーベルは、
私的な世界・特異点から、普遍性を取り出していけるのではないかと思っています。
今後もわくわくして待っています。

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