・鹿乃 「day by day」(作曲:田中秀和 作詞:鹿乃)
・V6 「GOLD」 (作詞作曲:真部脩一 編曲:トオミヨウ)
・佐藤ひろ美 「Forget-me-not」(作曲:長瀬五郎 作詞:片岡知子)
・山田晶造 「サザエの家」
感想おおめに、5曲聴いてみます。
■1. Wake Up, Girls! / 恋?で愛?で暴君です!
イントロがめちゃめちゃ面白いですね! 無理やり聴きとってみます。
(17/05/24追記)
フル版がめちゃめちゃ良かったので、追記しました。
以下続きます。話半分でどうぞ。
↓
イントロを見てみましょう。
動画0:06-
こっち むい て むいちゃって
II7 V7 I7 IV7
こいで あいで ぼう くん です
II7 V7 III7 III7/VII VI7
つ か まえ た
II7 II7/VI bVIdim7 IIdim7
どうどう どう なっ ちゃう
I7 IV7 VII7 bVII7
※実音だと、
| A7 D7 | G7 C7 |
| A7 D7 | B7 E7 |
| A7 A7/E Ebdim7 Adim7 |
| G7 C7 F#7 | F7 |
*
イントロがセブンスコードの連続で出来ていますね。
この曲は、イントロのコード全てに
トライトーン(増4度/減5度)というキツイ音程が入っています。
(参考:ひなビタ♪ あのね! 第13回「ドミナントモーションってなぁに?」)
トライトーンは通常、次のコードで解消されて安定状態になるんですが、
休みなく次々にトライトーンの響きを重ねていくことで、
ドキドキハラハラ恋のサスペンス、という感じのサウンドになっています。
作品に合っていますね。
青字部分の一瞬のdim7も、セブンスコードの変形です。
(bVIdim7 = IIdim7 = V7(b9)の根音省略形)
特にdim7は、一つのコードでトライトーンが2個も入っているので
ぎりぎりの綱渡りのような響きです。
*
メロディーラインを見てみると、
赤字部分の音程に、トライトーンが取り入れられています。
イントロの間に なんと6箇所も使われています。
トライトーンはクセが強すぎるので、
メロディーに使うのはとてもハイリスクなんですが、
上手く使えばこんなに求心的なサウンドになります。
コードとメロディーのトライトーン推し、すごい発想です。
そして、このドキドキハラハラ感を引っ張ったおかげで、
サビ1:08-の王道感、安心感、カタルシスが生まれています。
全編通して、音程とるのが非常に難しい曲だと思うんですが、
WUGがばっちり歌いこなしていますね。
田中さんとWUG、頼れるコンビネーションです。
フル版も楽しみ。
(17/05/24 追記)
フル版聴きました。なにこのDパート……田中さんすごい。
この曲は全編通してドミナント(セブンス)、トライトーンの魅力が
爆発していて、めちゃめちゃ面白いです。
田中さんのWUG愛がわかります。
2:17から2:55まで、メロディがG HMP5Bスケールになっています。
これだけ長回しするのはすごいです。強烈にマイナーでダウナーな世界。
参考記事:田中秀和さんのスケールを聴いてみよう
3:01-はこんな感じでしょうか。
(早すぎて聴きとれないので、雰囲気でつけました)
こっち むい て むいちゃって
II7 V7 I7 VI7
こいで あいで ぼうくん です
II7 bVIdim7 VI(b9) #Idim7
つ か まえて はな さ ない
II7 V7 IIIm7b5 VI7
実音で
A7 D7 G7 E7
A7 Ebdim7 E7(b9) G#dim7
A7 D7 Bm7b5 E7
*
ものすごく細かいところですが、
下記の微妙なメロディーの変化が好きです。
0:55-
は な さ ない
B F E Bb (トライトーン・減五度)
3:07
は な さ ない
B F E B (完全五度)
トライトーンの不安定感が、完全五度に置き換わって解消されています。
最後のサビへジャンプする準備が整った感じです。
ラストは、この後の「ねえもっと」も、完全五度上に置き換わっていて、
あまりの跳躍力(+7)に耳がびっくりしますね。
遊びが満載で、何回も聴きたくなります。
*
おまけで、イントロのギターのフレーズも見てみましょう。
セブンスコードを4度でつないでいくと、内声に半音下行が出来ます。
II7 V7 I7 IV7
(レ ファ# ラ ド) (ソ シ レ ファ) (ド ミ ソ シb) (ファ ラ ド ミb)
この赤字部分をつないで、ギターの半音の動きができています。
*
■2. 鹿乃 - day by day
鹿乃さんの柔らかい歌唱が魅力的な、かわいい曲です。
0:39の「きみだぁって」「あの子だって」の半音、いいですよね。
一瞬のマイナー感が切なげですてき。
曲の組み方がとても好み。
0:32-で、「やさ」「しさ」「とか」
「ぬく」「もり」「とか」の跳躍パターンが提示されて、
1:12- あたりで、このままサビが終わるかなと思いきや、
1:15- でもう一度切なげなマイナーに進んで、
1:17-「ハロ」「ハロ」「ハロ」の跳躍パターンで着地する、
という美しい構成ですね。
こういう丁寧なつくりにときめきます。
歌詞だけではなく、曲構成でドラマやロマンを語るのが好きです。
MVがきちんと曲構成を理解し演出していて、素晴らしいですね。
関連記事
・田中秀和さんのスケールを聴いてみよう
・田中秀和さんの「落ちサビ転調」を聴いてみよう
*
■3. V6 - GOLD
作曲は真部脩一さん、編曲はトオミヨウさん。
なにこの曲……! 好き……!
とんでもないの出てきた。
V6の甘いボーカルがこんなに合うなんて。
一人ひとりの違いがとてもいい。特に1:18-の長野さん好き。
真部さんがモーダルインターチェンジやピカルディ3度など
新しい響きを使っていたり、
トオミヨウさんの編曲が真部サウンドにぴたっとはまっていたり。
真部さんのシンセ使いの雰囲気を残しながら、ここまで美しく組み上げるのって
離れ業です。
新機軸すぎて、
真部脩一 - トオミヨウ - V6 であと100曲くらい聴きたいです。
真部さんの、弱サビに強サビを重ねる手法が用いられています。
「上京証拠」で生み出されたアイデアが結実していて、感動的。
聴いていると、
一個一個のコードを追うことはできるし、説明もつきそうだけれど、
組み合わせるとなんでこんなに良い音ができるのか、理由がわからないです。
ブライアン・ウィルソンの「The Like in I Love You」を
聴いた時と同じようなショックを受けています……。
こんなにシンプルな曲想なのに。魔法のように名曲になっています。
大好き。
発売されたら一日中聴きます。
(17/5/4 追記)
発売されたので一日中聴いてます。好きだ……。
ラストは、いちど曲を止めてからの長二度転調(+2)。
+2は意外性ありますね。
真部さんのラスト転調は、アルバム1枚に1回あるかないかくらいの頻度しかなく
ここぞというときに使われますね。
曲を一回壊してから、転調するスタイルが独特でかっこいい。
「さわやか会社員」「恋するカレンダー」「キストピックス」など。
関連記事
・真部脩一(ex. 相対性理論) のペンタトニックスケールを解析してみよう
・ハナエ・真部脩一の「上京証拠」をみつけよう
*
■4. 佐藤ひろ美 - Forget-me-not
作曲はinstant cytronの長瀬五郎さん。
サビが素晴らしいので、聴きとってみます。
0:45-
Forget me not
| V7(9) V7(b9)/VII |
わたしの よこで
| IV△7 | IIm7b5 | IIIm7(9) | bVIIdim7 VI7 |
あなたが わらった まるでなつの ひまわり
| IIm7 | V7 | I△7 | I7 |
わすれな い わ
| IV△7 | IIm7b5 | IIIm7(9) | VI7(b9,#9,b13) VI7 |
そっとむ す んだ たいせつな やくそく
| IIm7 | V7 (9) | I△7 | I7 |
*
職人芸的で惚れ惚れしますね。赤字の dim7系コードと、青字のハーフdimコードがとても好き。
切なげで綺麗です。
VI7(b9,#9,b13) は、たぶん聴きとり間違っていると思いますが
オルタードテンションで濁る一歩手前のような、繊細な和音。
IIIm7(9)は、
コーラスが一瞬9thを踏んでから、ポルタメントしてm3rdへ進んでいる
ように聴こえました。ほんとに細かい動き。
ピッチがゆらいだり、少し低めになる佐藤ひろ美さんのボーカルが、
微妙な色彩の変化を加えています。
アレンジを見ると、
サビ頭からの、メロディー、フルートの対旋律とコーラスの絡み合いに
感動してしまいます。
*
■5. Shouzou Yamada - サザエの家
作曲は山田晶造(Shouzou Yamada)さん。北園みなみさん。
出オチだと思わせて、最後まで聴かせる天才的な構成力です。すごい。
シンプルで良いモチーフに聴こえてきます。
冒頭に、モチーフを同じ音高で2回繰り返すのは、
サザエさんの元ネタ の方を意識しているのかもしれません。
好きなところ
0:39- 素晴らしいボーカル
0:41- 右chのブラス
0:47- はっはっはっはっ
1:27- ドグシャァ
1:46- モチーフを裏打ちに切り替える発想! とても好き。
プロコフィエフの古典交響曲第1楽章みたいです。
0:29、1:27の裏打ちが、展開の予告になっていたのかも。
2:05- ここだけ「カン!」の代わりに、短いブレス音だけが入れてあり、
スムーズに元のリズムに復帰します。
一瞬の静寂がかっこいい。
曲中のそこかしこに細かな遊びが散りばめられていて、
何回でも聴きたくなります。
関連記事
・北園みなみ「promenade」聴きました。
kahoさん こんにちは。
返信削除久しぶりに真部さんの新曲聴きましたぁ。いつものごとく1回目に聴いてハッ!となり、2回目聴いて泣きました。真部さんの新曲聴いたのハナエさんのアルバム以来です。V6 GOLD・・・ WIKIにすら載っていない情報じゃないですか!?
もしかしたら私が知らないだけでいろいろな曲を作っているのでしょうか!?
「恋?で愛?で暴君です!」の最初の10秒で「最後まで聴くともっといいことあるよ!」感、流石天才は違うなぁって思います。田中秀一さんいい曲しか作っていないような気が・・・
こんにちはzunana777さん。
返信削除真部さんの新曲はいいですねー。男性アイドルとこんなに合うとは、嬉しい驚きでした。V6全員の声が良いのも新発見です。
真部さんの活動の全貌は、謎ですね……。これからは「集団行動」を通じて告知がされるんじゃないでしょうか。
最近だとナナヲアカリさんの楽曲に、編曲で参加されてたりしますね(2曲め)
https://www.youtube.com/watch?v=uSo0ED51rrs
田中さんの「いいことあるよ感」はとてもわかります。思わず惹かれますね。
作品に合わせて、「田中感」を色濃く出したり、逆にひっこめたりできるのが素敵です。どんな場面でも、ぴったりの曲が書ける方ですよね。