2020/03/22

トナリノサティの可愛くて複雑なポップスを聴こう『空想集Ⅰ』

こんにちは。
今回は2人組ユニット、トナリノサティの音楽を紹介します。
https://tonarinosatie.jimdofree.com/

トナリノサティは、
ボーカルの嘴音杏(シオン アン)さんと、
フルートの荒井亮介さんの2人組ユニットです。
お2人とも1993年生まれの26歳です。 (※2020/3/22時点)

3曲入りの1stEP『空想集Ⅰ』を偶然聴いたのですが、とても好みでした。
ときに渋谷系のように可愛く、ときにクラシックやジャズの香りも漂う
遊び心たっぷりの音楽に魅了されました。

TWEEDEES(沖井礼二さん)とか、MONACA(特に田中秀和さん)とか
Lampのような、凝っててキュートな作品がお好きな方にお薦めします。
フルート好きな方にもお薦め。

サブスクでも配信されていますので、ぜひ聴いてみてください。
■トナリノサティ『空想集Ⅰ』 (Spotify)


■トナリノサティ『空想集Ⅰ』(Apple Music)



以下、『空想集Ⅰ』の楽曲を一曲ずつ紹介したいと思います。

■1. トナリノサティ - アドニスモルフォの庭
作詞:嘴音 杏 / 作曲:荒井 亮介

フルートの荒井亮介さん作曲。
イントロを聴いた時、おしゃれな渋谷系の感じかな、と思ったのですが、
Aメロ、1コーラス、1曲2曲3曲と聴いていくうちに、
あまりに凝った展開、和声、メロディに驚いてしまいました。
遊び心いっぱいで、聴いててドキドキする音楽。

中身はめちゃ難しいですが、ざっくりコード聴きとりしてみます。
以下、続きます。話半分でどうぞ。

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■イントロ
|  C     Eb   |  Ab     G   |
[C:I   bIII     bVI     V   ]
                             

■Aパート 0:04-
    つま先立ちしてー
    | G△7             | C7         | F△7       |
    [ G:I△7       ]  [ F:V7         I△7      ]
属調転調 (-5)       長二度下(-2)             

   | Bbm7      Eb7  | Ab△7    |
   [Ab: IIm7    V7       I△7 ] 
短三度上(+3)          

   | Dm7     G7   | C     | C     |
   [ C:IIm7   V7    I        I     ]
長三度上(+4)

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軽快なフルートのイントロで始まって、
Aパートまでの16秒間でいきなり4回の転調しますね。
ころころ転がるような変化が楽しいです。



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■Bパート 0:16-
 裸足で駆け出したー
       | Fm9     | Bb7(13)   |  Ebm9       | Ab7(13)  |
       [Eb:IIm9    V7(13)  ]  [ Db:IIm9     V(13)       
短三度上(+3)              長二度下(-2)                 

  Db△9  | Gb△7(13)    |
   I△9       IV△7(13)    ] 


■Cパート 0:26-
はじまるー
   | Fm7       Gb6      |  Eb7/G    Gb6    |
   [Ab:VIm7  bVII6      V7/VII   bVII6   
 属調転調 (-5)

  | Fm7       Gb6      |  Eb7/G    Ab      | 
    VIm7     bVII6       V7/VII     I      

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Bパートはテンション付きのツーファイブの連続がジャズ味あります。
Cパートは和声の緩やかな変化が、クラシック味ありますねー。
(僕だと、うまく聞き取れませんでした)
あまりポップスでは聴かない響きで、荒井さんならではのアイデアですね。



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■Dパート(サビ) 0:31-
わたしは少しー
| Db△7    | C7      | Fm7     | Bb7     |
 IV△7       III7        VIm7       II7
               IIIフリジアン                 VIブルーノート

| Db△7    | C7(b9)      |  Fm7     | Bb6     |
 IV△7       III7(b9)          VIm7       II6
              IIIHMP5B+#9

| Db△7    | Caug7       |  Fm9     | Bb6     |
 IV△7       III7               VIm9        II6    ]
               IIIHMP5B+#9                
                   
   | Ebm9    | Ab7(9,13)   |
   [Db:IIm9      V7(9,13)   ]
下属調(+5)                             

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Dパートはポップスの文法で、めちゃキャッチーです。
メロディに臨時記号がふんだんに使われていて、スケール変化がオシャレ。
フルートアレンジ面白いです! ぴょんぴょん跳ねます。



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■C'パート(間奏) 0:53-                     
   | Eb7/G       Ab6      |  F7/A    Ab6    |
  [Bb:IV7/VI  bVII6      V7/VII   bVII6   
 短三度下-3

  | Gm7       Ab6      |  F7/A     Bb      |
    VIm7     bVII6       V7/VII     I      ]
                                                  
■Aパート(2番)  0:59-
    | G△7      |
    [ G:I△7   ] 
短三度下-3             

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サビ終わりで、先ほどのCパートと同じ半音の動きがありますが、
調が異なりますね。面白いです。
(追記)
twitterにて、aino urai(@ainourai) さんの
貴重なツイートを拝見し、上記赤字部を修正しました。
 修正前Gm7 → 修正後Eb7/G
メロディ(Eb)との当たりが解消されて綺麗になりました!
こういう細かな工夫があったのですね。ありがとうございます。

以上、AメロからAメロ2までのワンコーラスの間に、
かなり凝った転調が繰り広げられているのがわかりました。

-2+3+4+3-2-5+5-3-3 = 0 で元の調に戻っています。
この細かい調変化をリアルタイムで聴きとるのは無理ですね……。

そのうえ、BPMも曲構成もスピーディーで
1分で1コーラス駆け抜けてしまうので、頭ぐるぐるして楽しいです。



これ以降の展開ですが、
上記を2コーラス繰り返したあと、
1:58- 軽快なウォーキング(ランニング)ベースに乗せて
フルートソロ~ピアノソロが始まります。超かっこいいです。

2:22- 落ちサビ。
2:32- ここのセリフ、歌詞カード持ってないのでわからないのですが、
 「Alpha et Omega」って言ってるんでしょうか? おしゃれ。
3:11- 終わり方、めっちゃ好き! カワイイです。


全体通して、とても複雑なつくりですが、
歌声やフルートが可愛く、サビが直感的でキャッチーなので
極上のポップミュージックになっていますね。



■2. トナリノサティ - 事務のペディの空想
作詞:嘴音 杏 / 作曲:荒井 亮介

こちらもフルートの荒井亮介さん作曲。
タイトルの通りで、
エリック・サティのジムノペディが下敷きになっています。
ミュージカル仕立ての可愛い音楽。
台詞もステキだし、複雑なハーモニーも心地よいですね。この曲好きです。

0:16-   ジムノペディ第一番の有名なコード進行
(key:D major)
   G△7      D△7
  [IV△7     I△7]
の繰り返しで組まれていますね。おしゃれ。
原曲とは違い、5拍子(3+2拍子)の面白いアレンジになってますね。

1:05- ここの「ゆめをみるー」から1:19まで、6拍子に変化します。
    半音下行のコードも綺麗。
1:20- 5拍子に戻り、フルートが入って一気に華やかな世界に。
1:35- 「サティの音楽に合わせてバレエを踊るの」という台詞を合図に、
1:38- ジムノペディ第一番のフレーズがフルートによって演奏されます。
(♪ミソファミシラシドソー)
こういう呼応いいですよね。

2:20- からガラッと曲調が変わって6拍子です。
キャッチーで良いメロディですね。歌がめちゃ上手い。。

3:36- で冒頭に回帰します。
3:56- 終わり方最高ですね。
 再びジムノペディ第一番のフレーズで、「♪らくえんへとびたつー」と
 歌われて幕を閉じます。めちゃ良いハーモニー……うっとりします。



■3. トナリノサティ - 月が綺麗ですね
作詞/作曲:嘴音 杏

8分の9拍子のバラード。こちらは嘴音杏さんの作曲です。
荒井亮介さんの楽曲とはまた異なり、
ご自身の歌を生かした、転調がなくストレートな旋律が魅力的です。

アレンジは室内楽風に、ピアノ、フルート、チェロ主体に、
丁寧に美しく書かれています。
(2:10-あたりは、左chからギターも聞こえますね)
綺麗なオケに包まれて、ボーカル嘴音さんの歌声が鮮やかに響きます。

構成としては、
・0:12- Aパート   (帰り道 満月は)
・0:35- Bパート   (触れたくて)
・0:50- Cパート   (手と手を)
・1:11- Dパート   (midnight blue)
・1:37- Eパート   (ah)
という感じでしょうか。
自然に聴いていましたが、実はメロディ5つもあるのですね。凝ってます。
僕はCパートのメロディが一番が好きです。フルートの長音が綺麗。

1コーラスの最後、1:43-の高音がとても美しいです。
「き」ーれーいーですねー  のところ、最高音まできれい。

2コーラス後 3:42-からはボーカルが退場し、
4:10- 優しいピッチカートの音色とともに、静かに終わります。


****

以上、トナリノサティ『空想集Ⅰ』より3曲を紹介しました。
曲数は少ないながらも、三者三様の曲想が詰まったEPですね。好き。
次回作もめちゃ楽しみです。


トナリノサティを知ったのは、
荒井亮介さんのtwitterアカウントで、
Lamp「さち子」のフルート6重奏アレンジを見たのがきっかけでした。
https://twitter.com/ararararairai/status/1162674177003757575
めちゃ素敵ですねー。

ほか、ご本人のYoutubeアカウントにも
素敵なフルートアレンジ音源がいろいろありました。おすすめです。
https://www.youtube.com/channel/UCixaPBPSnEe6a7_bNihaKQQ


■Ryosuke Arai - アルバム「Petrichor」ダイジェスト

荒井亮介さんソロ名義のアルバムもよさそうですねー。
ちょっとずつ聴いてみます。

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