「白と黒のとびら」は
数学の一分野であるオートマトン・形式言語を題材にした、
魔法使いの少年の成長物語です。
びっくりするくらい面白い!
こういった数理をモチーフにした読み物は、
理論の解説のための簡素な筋書きになりがちだけれど、
この作品はむしろストーリーテリングに作者の妙技が発揮されていて、
現代の魔法物語の筆頭になる予感がします。
出版されたのが奇跡と思われるくらいの良書なので
この隙に広くひろく読まれるべきです。
簡単な紹介を書いてみよう。
出版されたのが奇跡と思われるくらいの良書なので
この隙に広くひろく読まれるべきです。
簡単な紹介を書いてみよう。
*
物語は、
主人公のガレットという少年が、
魔法使いである師匠から「第一古代ルル語」を学ぶところから始まります。
魔法使いである師匠から「第一古代ルル語」を学ぶところから始まります。
第一古代ルル語は、昔の妖精の言葉。
こういう5つの文からできています。
●●○ ○●○○● ●○○● ○●●○ ○○●●
こういう5つの文からできています。
●●○ ○●○○● ●○○● ○●●○ ○○●●
●、○という2つの文字は、便宜上"黒"とか"白"とか呼ばれるけれど、
正式な読み方は誰も知らないし
上記の5つの文の意味さえ誰も知らないといいます。
ガレット少年は困惑しながら、様々な言語の習得に努めます。
僕は魔法使いになりたいのに、なんでこんな訳の分からない言語を学ぶのか?
*
そんなガレットのもとへ、あるとき ひとつの依頼が舞い込みます。
「人喰い岩」と呼ばれる妖精の遺跡を調査して欲しい、と。
ここから、白と黒の2値をめぐる不思議な物語が動き出します。
妖精の遺跡は、入口と出口、それに連なるいくつかの部屋に別れており、
各部屋には「白」と「黒」の2つのとびらが付いています。
各部屋で正しい扉を選択していけば、
入り口から出口までぐるっと一周して無事に遺跡の外に出られるのですが、
間違えれば、二度と戻れない場所に転送されたり、命を奪われたりするといいます。
過去に、「白 黒 黒 白」の順で扉をあけ、無事に通過できたひともいれば、
別の経路をとおってしまい遺跡に「喰われた」ひとも数多くいました。
ガレットは、「無闇に遺跡に入るな」という師匠の言いつけにも物怖じせず、
師匠を見返すためにひとりで遺跡に挑むのでした。
*
果たしてガレットは遺跡の謎をとき、立派な魔法使いになれるのでしょうか。
ワクワクした方、
下記で第一章が試し読み出来ます。
http://www.utp.or.jp/topics/files/2013/shirotokuronotobira.pdf
*
この作品の素晴らしいところは3つです。
1. 師を超える、という明快なビルドゥングスロマン
主人公の成長を見守るのは単純に楽しい。
読者も、主人公とともに学習し成長する楽しさを味わえる。
2. 現代数学を用いた、独創的な魔法体系
白と黒の羅列だけで組まれた、オリジナリティあふれる魔法観。
古代語、遺跡、魔法といった要素が最終的に一つの理論に練り上げられる。
ゲーム/パズルデザインとしても完璧。
3. 回答を間違えたら死、という理不尽な謎解き
スフィンクスの問いのように、知性・パズル力が生死を分ける局面の数々。
昔話や妖精譚の問答無用の凄みがストーリーに備わっており、
最後までハラハラが止まらない。
特に2.と3.ですが、
理屈である魔法体系と、理屈を超えた畏怖の存在 とのコントラストが際立ち、
ファンタジーとしての奇妙な説得力が生まれています。
作者の川添さんは、本作がデビュー作なのですが、
ベテランと言わしめんばかりのバランス感覚をお持ちだと感じました。
*
破格の面白さを秘めた本書ですが、
一般的なファンタジーと比べた場合、面食らうような難しい理論が展開されています。
チューリングマシン がテーマとして取り上げられたりします。
その点、万人にとって楽しめる本だ、とは言えないかもしれません。
しかし、本文を丁寧に追えば、論旨はすべて理解できるように書かれており
たとえ難しくても、読者は主人公とともに学び成長していくことが可能です。
学びとは未知の遺跡に挑むようなものだ、
そう思って本の中を冒険すれば、こんなに面白い作品は他にありません。
お勧めです。
特に、
・ファンタジー好きな方、
・ダグラス・ホフスタッターとかマーティン・ガードナーとかの数理読み物が好きな方、
・ゲーム、パズルを解くのが好きな方。
は、必ず気に入っていただけるはず。
ガレット少年は困惑しながら、様々な言語の習得に努めます。
僕は魔法使いになりたいのに、なんでこんな訳の分からない言語を学ぶのか?
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そんなガレットのもとへ、あるとき ひとつの依頼が舞い込みます。
「人喰い岩」と呼ばれる妖精の遺跡を調査して欲しい、と。
ここから、白と黒の2値をめぐる不思議な物語が動き出します。
妖精の遺跡は、入口と出口、それに連なるいくつかの部屋に別れており、
各部屋には「白」と「黒」の2つのとびらが付いています。
各部屋で正しい扉を選択していけば、
入り口から出口までぐるっと一周して無事に遺跡の外に出られるのですが、
間違えれば、二度と戻れない場所に転送されたり、命を奪われたりするといいます。
過去に、「白 黒 黒 白」の順で扉をあけ、無事に通過できたひともいれば、
別の経路をとおってしまい遺跡に「喰われた」ひとも数多くいました。
ガレットは、「無闇に遺跡に入るな」という師匠の言いつけにも物怖じせず、
師匠を見返すためにひとりで遺跡に挑むのでした。
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果たしてガレットは遺跡の謎をとき、立派な魔法使いになれるのでしょうか。
ワクワクした方、
下記で第一章が試し読み出来ます。
http://www.utp.or.jp/topics/files/2013/shirotokuronotobira.pdf
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この作品の素晴らしいところは3つです。
1. 師を超える、という明快なビルドゥングスロマン
主人公の成長を見守るのは単純に楽しい。
読者も、主人公とともに学習し成長する楽しさを味わえる。
2. 現代数学を用いた、独創的な魔法体系
白と黒の羅列だけで組まれた、オリジナリティあふれる魔法観。
古代語、遺跡、魔法といった要素が最終的に一つの理論に練り上げられる。
ゲーム/パズルデザインとしても完璧。
3. 回答を間違えたら死、という理不尽な謎解き
スフィンクスの問いのように、知性・パズル力が生死を分ける局面の数々。
昔話や妖精譚の問答無用の凄みがストーリーに備わっており、
最後までハラハラが止まらない。
特に2.と3.ですが、
理屈である魔法体系と、理屈を超えた畏怖の存在 とのコントラストが際立ち、
ファンタジーとしての奇妙な説得力が生まれています。
作者の川添さんは、本作がデビュー作なのですが、
ベテランと言わしめんばかりのバランス感覚をお持ちだと感じました。
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破格の面白さを秘めた本書ですが、
一般的なファンタジーと比べた場合、面食らうような難しい理論が展開されています。
チューリングマシン がテーマとして取り上げられたりします。
その点、万人にとって楽しめる本だ、とは言えないかもしれません。
しかし、本文を丁寧に追えば、論旨はすべて理解できるように書かれており
たとえ難しくても、読者は主人公とともに学び成長していくことが可能です。
学びとは未知の遺跡に挑むようなものだ、
そう思って本の中を冒険すれば、こんなに面白い作品は他にありません。
お勧めです。
特に、
・ファンタジー好きな方、
・ダグラス・ホフスタッターとかマーティン・ガードナーとかの数理読み物が好きな方、
・ゲーム、パズルを解くのが好きな方。
は、必ず気に入っていただけるはず。
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