MONACA・神前暁さん作曲の「chocolate insomnia」を聴いて、
コードの転回形の響きを覚えてみましょう。
とても美しい和音です。
■羽川翼(堀江由衣) - chocolate insomnia
めっちゃいい曲。
■chord wiki - chocolate insomnia
https://ja.chordwiki.org/wiki/chocolate+insomnia
分数の形をしたコードがいっぱい書いてありますね。
その多くが、「転回形」と呼ばれる和音です。
以下、続きます。
間違いも多いと思いますので、話半分で読んでみてください。
↓
■転回形とは?
ベースが普通じゃないコードです。
ド・ミ・ソ という和音があるとき、普通は根音の「ド」をベース音にしますが、
ミ(第3音)やソ(第5音)をベース音に使うこともできます。
このように、第3音や第5音、第7音をベース音にもってきたコードを「転回形」といいます。
こちらの講座動画がわかりやすくて素晴らしいです。
■【第55回 音楽理論講座】コードの転回形について1
**
同じ「ドミソ」でも、どの音をベース音に選ぶかによって呼び名がかわります。
例えば下記のような感じです。
構成音
I (基本形) : ド・ミ・ソ ベース音がド
I (第一転回形) : ミ・ソ・ド ベース音がミ ( I / III )
I (第ニ転回形) : ソ・ド・ミ ベース音がソ ( I / V )
V7 (基本形) : ソ・シ・レ・ファ ベース音がソ
V7 (第一転回形) : シ・レ・ファ・ソ ベース音がシ ( V7 / VII )
V7 (第二転回形) : レ・ファ・ソ・シ ベース音がレ ( V7 / II )
V7 (第三転回形) : ファ・ソ・シ・レ ベース音がファ ( V7 / IV )
「第○転回形」という呼び名で区別するんですね。
転回形は、「構成音はいっしょだけど、ベース音の選び方だけが違うんだ」
というところがわかればOKです。
以下、第一転回形…1転、第二転回形…2転、という感じで表記します。
***
では、曲をみていきましょう。
■前奏(0:00-0:18)
前奏のコードをみてみます。
V/VII I V7/IV I/III
V/VII I V7/IV I/III
[key-2]
V/VII I IV Vsus4
上記の赤字のところが「転回形」とよばれるコードの形です。
ぱっと見だと、なんだか難しそうです……。
そこで、転回がわかるように書き直してみます。
V (1転) I V7 (3転) I (1転)
V (1転) I V7 (3転) I (1転)
[key-2]
V (1転) I IV Vsus4
このように書くと、実際はI、IV、Vのスリーコードから出来ているのがわかります。
転回を除けば、シンプルでわかりやすいですよね。
響きを聴いてみると、どこか落ち着きを感じる柔らかい音がします。
■転回形の効果
転回形を使うことで、
①コードの響きをやさしくする。
②べースラインをなめらかに繋ぐ。
といった効果が得られます。
*
①コードの響きをやさしくする
転回形は、ベース音を本来の位置から「浮かせる」ことになるため
ふわっと優しい聴こえ方をします。
クラシック音楽やピアノ曲で好んで用いられます。
②ベースラインをなめらかに繋ぐ
転回形を上手く並べると、ベースラインを整えることが出来ます。
イントロの4つのコードについて、もし転回形を省いたらどうなるでしょうか。
・転回形がない場合
コード : V I V7 I
ベースライン: ソ → ド → ソ → ド ベースラインとびとび。強い進行。
転回なしの ソ→ド(4度上行)の動きは、とても強い進行です。
曲のメインエンジンになりますが、連続するとしつこくなりがちです。
イントロからこれだと、ちょっと激しすぎるかも。
・転回形がある場合
コード : V(1転) I V7(3転) I (1転)
ベースライン: シ → ド → ファ → ミ ベースラインなめらか。弱い進行。
そこで、転回形を上手く並べると、本来のソ→ドという強いベースの動きを
シ→ド や、 ファ→ミ といった、2度のなめらかな動きに変えることができます。
これにより、柔らかくて変化に富んだコード進行がつくられています。
**
イントロで出てきた転回形まとめ:
★V(1転) → I ( V/VII → I 、 シレソ → ドミソ )
ベースラインがシ→ドで動く、自然なつなげ方です。
Aメロとサビでも、同じ形が登場するので、覚えておきましょう。
★ V7 (3転) → I(1転) ( V7/IV → I/III 、 ファソシレ → ミソド)
ベースラインがファ → ミで動きます。
ミの音は、ふわっと軟着陸している感じがしますね。
I(1転) は、I(基本形)の強い響きを和らげたい時に使います。
■Aメロ(0:18-0:42)
転回形の感じがほんのちょっとわかりました。
それではAメロを聴いてみましょう。
ごめんね こんなふうに きみのことを こまらせるの
Vadd9/VII Iadd9 IVadd9 Vsus4 V
さいしょで さいごだって きめてい る な んど も
Vadd9/VII Iadd9 IV Iadd9/V V7 Iadd9 I7
***
(転回形表記)
ごめんね こんなふうに きみのことを こまらせるの
V (1転) I IV V
さいしょで さいごだって きめてい る な んど も
V (1転) I IV I (2転) V7 I I7
***
前奏Aメロも、イントロと同じく I、IV、Vのスリーコードで出来ています。
赤字の転回形コードに着目して聴いてみてください。
どこかクラシカルで、上品な感じがしますよね。
出てきた転回形:
★V(1転) → I ( V/VII → I 、 シレソ → ドミソ )
ベースラインがシ→ドで動きます。イントロにも出てきましたね。
★I (2転) ( I/V ソドミ )
「終わりそうで終わりきらない」感じのコードです。
I(ドミソ)のどっしりした終止感に比べると、Iの第二転回形は特に終止感が弱く、
次の展開へ期待をもたせる感じがします。
I と V (ソシレ) の中間みたいな機能のコードです。
■Bメロ (0:42-0:58)
つづいて、動きが楽しいBメロです。
やたら あま すぎ る チョコレイ ト みたい な
IV△7 V7/IV IIIm7 IVm7 IIm7 V7(9,11,13) Iadd9 I
[key+3]
まっし ろな よるは うそだらけ おとぎばなし の
IIm V I Im I/V I II/#IV IIadd9/#IV
せか い
#IV7sus4 #IV
***
(転回形表記)
やたら あま すぎ る チョコレイ ト みたいな
IV△7 V7 (3転) IIIm7 VIm7 IIm7 V7 I
[key+3]
まっし ろな よるは うそだらけおとぎば なしの せか い
IIm V I Im I (2転) I II (1転) #IV7 #IV
***
イントロ、Aメロでは、ベースラインを滑らかに繋ぐようにコードが組まれていましたが
Bメロでは、先ほどと異なりベースラインに動きをつけています。
コードの種類も一気に増え、ポップス風になりました。
そのおかげでBメロは超キャッチーに聞こえます。
このギャップがいいですよね。
Bメロ途中では「短3度上転調」(key+3)も使われていますね。
参考記事:神前暁さんがつくる魅惑の「短3度転調」
出てきた転回形:
★ V7 (3転) → IIIm7 ( V7/IV → IIIm7 、 ファソシレ → ミソシレ)
イントロでも出てきたV7(3転)は、ファ→ミのモーションを作ることができます。
★ I (2転) ( I/V 、ソドミ)
先ほども登場したとおり、
「終わりそうで終わらない感じ」でサビへとつないでいきます。
引っ張る感じがとても好き。
この和音きっかけで、リズムもサビを期待させる4拍刻みに変わっていますね。
★ II (1転) ( II/#IV 、ファ# ラ レ)
ベースラインを ソ → ファ# で動かすときに用いられたりします。
I (2転) → II (1転 ) ( ソドミ → #ファラレ ) は相性が良い組み合わせです。
■Cメロ(サビ) (0:58-1:22)
では、サビのコードをみてみましょう。
サビ終わりにとてもきれいな転回形の連続がありますね。
[key-1]
ほんとは ずっと ゆめみて いたの
I IV V7/VII Iadd9
ほんとは ずっ と しらなか っ た
VI7 IImadd9 IIm IVm V VI
[key+2]
ねむりひめはね おうじの キス を
I IV V7/VII Iadd9 I7/bVII
まっ て いる だけで は だめだ
IVadd9/VI IVm6/bVI I/V II/#IV IIm7 Vsus4
[key-2]
と
V/VII I …
***
(転回形表記)
ほんとは ずっと ゆめみて いたの
I IV V7 (1転) I
ほんとは ずっ と しらなか っ た
VI7 IIm IVm V VI
[key+2]
ねむりひめはね おうじの キス を
I IV V7 (1転) I I7 (3転)
まっ て いる だけで は だめだ
IV (1転) IVm (1転) I (2転) II (1転) IIm7 Vsus4
[key-2]
と
V (1転) I …
***
「王子のキスをー」から、転回形を駆使してベースがなめらかに組まれています。
めっちゃ美しいです。
V7(1転) I I7(3転) IV(1転) IVm(1転) I(2転) II(1転)
ベース: シ ド シb ラ ラb ソ ファ#
出てきた転回形:
★ V7(1転) → I
先ほどのシ → ドのモーションです。
★ I → I7(3転) ( I → I7/bVII 、 ド ミ ソ → シb ド ミ ソ)
セブンスをベースとして付け足して、ド → シbの動きを作ります。
★ IV(1転) → IVm(1転) ( IV/VI → IVm/bVI 、ラ ド ファ → ラb ド ファ)
サブドミナント → サブドミナントマイナー の第3音の動き(ラ→ラb)を、
第一転回形を使ってベースに持ってきています。
★ I (2転) → II (1転 ) ( I/V → II/ #IV 、 ソドミ → ファ# ラレ )
「ソ→ファ#」というベースの半音下がりの動きがつくられています。
Bメロにも同じような並びがありましたね。
■Dメロ (2:52-)
最後にDメロの転回形を聴いてみましょう。
これもおしゃれです。
いいたくて いえなかったことば
Iadd9 IVm / I
ゆびさきで ともすたびに
Iadd9 IVm / I
***
(転回形表記)
いいたくて いえなかったことば
I IVm (2転)
ゆびさきで ともすたびに
I IVm (2転)
***
出てきた転回形:
★I → IVm(2転) (I → IVm/I 、 ド ミ ソ → ド ファ ラb)
ベースのドを維持しつつ、変化を加えるコード進行です。
ベースが動かないので落ち着きが生まれ、盛り上がり前の助走にぴったりです。
マイナーなしの I→ IV(2転) の形でよく登場します。
*****
■転回形まとめ
登場した転回形を、下記にまとめてみました。
いっぱい出てきていますね!
(使い方メモは主観がいっぱい入っているので、おまけ程度にどうぞ)
[分数表記] [構成音] [使い方メモ]
I I ド ミ ソ ・どっしり終わる
I (1転) I/III ミ ソ ド ・やわらかく終わる
I (2転) I/V ソ ド ミ ・終わりそうで終わらない。 IとVのあいだの効果。
I7 I7 ドミソ シb ・IVにつなぐ
I7(3転) I7/bVII シb ドミソ ・I7(3転) → IV(1転) や、 I7(3転) → VIm の形で
「シb→ラ」のベースライン
IV IV ファ ラ ド ・サブドミナント
IV(1転) IV/VI ラ ド ファ ・IV(1転)→IVm(1転)で、「ラ→bラ」のベースライン
IV(2転) IV/I ド ファ ラ ・I → IV(2転) や、 I→IVm(2転) の形で
ドのベース音を維持
V V ソ シ レ ・V → I で「ソ→ド」の強いベースライン
V(1転) V/VII シ レ ソ ・V(1転)→ I で「シ→ド」の弱いベースライン
V7 V7 ソシレファ ・V7 → I で「ソ→ド」の強いベースライン
V7 (3転) V7/IV ファソシレ ・V7(3転) → I(1転) や、V7(3転) → IIIm の形で、
「ファ→ミ」のベースライン
II II レ ファ# ラ ・IImの代わりにおく。(V度調への部分転調)
II(1転) II/#IV ファ# ラ レ ・I (2転) → II(1転) や、 V → II (1転) の形で、
「ソ→ファ#」のベースライン
いっぺんにみてもよく分からないので、
ひとつひとつ独立したコードとして扱い、1個ずつ響きを覚えるのが良さそうです。
まずは、ポップスでも使えそうな下記3つがおすすめです。
・I (1転) ( I / III )
・IV (2転) ( IV / I )
・V (1転) ( V / VII )
■終わりに
神前暁さんの用いる「転回形」の和音を聴きました。
「chocolate insomnia」は転回から生まれるクラシカルな響きがたっぷりです。
とても好きな曲。
本記事では転回によるベース音の繋がりに着目しましたが、
実際にはベースだけでなく、コードの全ての構成音をなめらかに繋ぐために
工夫されています。
JPOPだと、転回形がこれほど使われることは稀で、
この曲はクラシックや器楽曲、声楽曲の作り方に近いように思いました。
(「和声学」「和声法」とかでググるとでてきます)
chocolate insomniaに限らず、
神前さんの作曲は、和音の各声部の繋がりがとても自然で、
こんなに高度な組み方でも、ぜんぜん難しく聴こえません。
聴き手に凄さを感じさせないというのが
神前さんの良いところで、凄いところですよね。
■おまけ
僕の好みで、転回形を多用したポップスを載せておきます。
・The Beach Boys - God Only Knows
ブライアン・ウィルソンの作曲。 0:17から。
・Lamp - シンフォニー
永井祐介さん作曲。 1:55から。
転回形には、なめらかにベースを繋ぐ使い方だけではなく
響きの意外性を狙う、という使い方もあります。
空虚で落ち着いた響きがとても好きです。
■過去記事
◆神前暁さんがつくる魅惑の「短3度転調」
http://kaho-ss.blogspot.jp/2014/09/3.html
今回も登場したキー±3 の転調を紹介しました。
◆田中秀和さんの「落ちサビ転調」を聴いてみよう
http://kaho-ss.blogspot.jp/2016/01/blog-post_15.html
http://kaho-ss.blogspot.jp/2016/01/blog-post_15.html
MONACAの田中さんの転調について書きました。
◆田中秀和さんのオーグメントコードを聴いてみよう
http://kaho-ss.blogspot.jp/2014/12/blog-post_7.html
http://kaho-ss.blogspot.jp/2014/12/blog-post_7.html
変てこでかわいい響きの和音です。
◆田中秀和さんのスケールを聴いてみよう
メロディーを彩るスケールの紹介です。
音楽理論の動画と羽川さまのOpが逆になってしまっていますね...笑。それでも大変興味深い記事でした。
返信削除同じコードでも置く順番を変えるだけでここまで印象が変えれるんですね、chocolate insomniaは大好きなのでこういう発見は嬉しいです。
おまけに出てきたGod only knowsはBBCがアレンジしたバージョンを音楽の先生に教えてもらったことがあるので、「この曲にはこんな仕組みがあったのか!」と驚きました(BBCがアレンジしたバージョンもかっこいいので検索してみることをお勧めします)
これからも音楽の素晴らしいテクニックを紹介してくださることを心待ちにしております。
こんにちはjoek punosさん。お読みいただきありがとうございます。
返信削除転回形の響きって綺麗ですよね。神前さんすばらしいです。
動画の入れ替わりなのですが、確認したところ私の環境だと正しく設定・表示されており、おそらくblogger起因のバグかと思われます……。
すみませんが、脳内補完のほどよろしくお願いします。
ご紹介いただいたGod Only Knowsのアレンジ版を聴いてみました。ベースラインも忠実で、とても作品愛を感じるカバーですねー。
ブライアンが独りで根を詰めて作った作品が、こうやって皆に歌われているというのが、なんだかうるうるきてしまいました。
返信ありがとうございます。今朝見たら動画も定位置にあったので、おそらくバグも一時的なものだったのでしょう。
削除転回形について私も調べてみたのですが、ホントにクラシックな域のようで「敷居が高すぎるっ!」と思ってしまいました。それをさらっとアニソンに盛り込む神前さんはたしかに素晴らしいですね。経験をもっと積んで神前さんのような自然な使い方を覚えていきたいです。
リクエスト、というよりは質問なのですが(というよりは自分が単純に好きな曲なので紹介したいだけなのかもしれませんが)、坂本真綾さんの「キミドリ」という曲をご存知ですか?
菅野よう子さん作曲のとっても面白い歌で、BからEのキーへの移調が特に気持ちいいです。気持ちいいのですが、chord wikiなどでコードを見つけることはできてもコード進行がどうにも理解できないのです。通っている高校の音楽の先生と一緒に考えてみましたが、モードが違う?かなんだか難解なコードを使ってる?というよくわからない意見しかもらえませんでした。
何かこの曲を説明できる音楽のテクニックなどがもしあれば、ぜひお聞かせください。長文失礼いたしました
こんにちはjoekさん。
返信削除「キミドリ」聴いてみました。めっちゃめちゃいい曲! 感動しました。菅野さんって天才的ですね。
こちらの曲の聴き取りに関してですが、
まずは、下記の2つのオンコードの響きを覚えるのが良いと思います。(もうご存知だったら読み飛ばして下さい)
①IV/V (別表記:IV on V、 F/G、 FonGなど) ファラド on ソ
②IV△7/V (別表記:IV△7 on V、 FM7/G、 FM7onGなど) ファラドミ on ソ
これらは、V7(ドミナント)の代理で使えるオンコードで、
浮遊して疾走する感じのおしゃれコードです。
※このコードの成り立ちですが、
下記のテンションコードが元になっています。
V7(9,11,13) = ソ シ レ ファ ラ ド ミ
このうちシとレを除いて、先ほどのオンコードをつくります。
IV△7/ V = ソ ファ ラ ド ミ
なので、V7(ドミナント)と機能はいっしょです。
chord wiki - キミドリ
https://ja.chordwiki.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%9F%E3%83%89%E3%83%AA
ここで出てくる、EM7/F#、A/B、E/F# といったフワフワするコードが、
先ほどのオンコードになります。(ベース音の全音下にメジャーコードが乗る)
分かりにくい時は、とりあえずEM7/F# → F#7、 A/B→B7 と言った感じで、普通の7thに置き換えOKです。(続く?)
追伸です。もしjoekさんの方で、ココらへんの音が知りたいという所があればお伝えいただければ幸いです。よろしくお願いします。
返信削除リクエストにお答えいただきありがとうございます!
削除IV/Vのコード自体は知っていましたが、Vにリードするためだけにしか使えないとばかり思っていたので、このような使い方は目から鱗でした。
それにしてもⅤ(ドミナント)から始まるコード進行ってどうやって着地するのでしょうか...?Ⅰ、Ⅱm、Ⅳ、Ⅵmなどから始まるコード進行には馴染みがありますが、トニックに戻す役割を持ってる(←個人的なイメージです)Ⅴから始まるというと動き方の見当がつきません...
今日も音楽の授業中一人で”キミドリ”のコード進行について考えていましたが、どうにもサビ前の動きが理解できませんでした。
一番Bメロの”いつもそばに”(Fm7, B♭m7)はkey=A♭のⅥm,Ⅱm7へ部分転調していると考えてよろしいのでしょうか。A♭は元のBの三度下なので、kahoさんが以前考察していた3度の転調ということで説明できる気がします。(Ⅵm→Ⅱmはジャジーな感じでお気に入りの動きなので、そうではないかと勝手に推測しているだけです。違っていたらすみません)
しかしそう考えたら、その後にある”優しいキミドリ”の"A/B" がなんのためにあるのかよく理解できません。このA/Bはkey=Eに繋ぐためのⅣ/Ⅴ?でもA♭とEって4度も違うケド大丈夫なの...?
掘り下げていけばいくほど頭の中が混乱して訳が分からなくなってしまいました。この部分で何が起きているのか説明がつくようでしたら、どうかご教示お願いいたします。(説明がつかなければ、同じく菅野よう子さんの「誰か、海を」のような無調に近い訳わからん曲。ということで納得もいきます笑) 長々とすみませんでした
「いつもそばに」のところ、joekさんの言われている解釈に賛成です。ですが、発想の経緯が分からず、
返信削除自分で同じものを組めるかというと難しいですよね…。
そこで「変化和音」での解釈を考えてみました。
(長文です、間違っていたらすみません)
① IV△7 ② #IVm7-5 ③ #IVm7
ファラドミ ファ# ラ ド ミ ファ# ラ ド# ミ
①の根音を上方変位させると②になり
さらに②の第五音を上方変位させると③になります。
ここで提案したいのは、
「①②③は構成音が似ているので、代理したり連結したり出来る」という考え方です。
(便宜的にIVで書きましたが、IV以外でもいいです)
①を②で置き換えたり、①-②を並べたりするのは良くやりますね。
一方、①-③の距離はなかなか遠そうです。
しかし菅野さん的には、①-③を繋いでもOK!と考えておられるように思います。
例1
Aメロ「いつのまに このまちは」のDM7→Ebm7が、①-③の連結です。
ドキッとする響きですが、確かにアリですよね。
(僕がつくるとしたら、普通のDM7 → Ebm7-5 (①-②)にしてしまうかと思います。ここで第五音を上げられるかどうかがセンスなのですよね)
*
例2:
「いつもそばに」のところですが、
まず、転調前、転調先の調を普通につなぐと
下記のようなコードがつくれるかと思います。
かった いつもそばに やさしいキミドリ
EM7 EM7 AM7 B7 EM7
(Bmaj) IV IV bVII I7 IV
(Emaj) I I IV V7 I
ここで、①を③で代理する(★)と、下記のように組めます。
かった いつもそばに やさしいキミドリ
EM7 Fm7 Bbm7 B7 EM7
(Bmaj)IV ★#IVm7 VIIm7 I7 IV
(Emaj)I #Im7 ★#IVm7 V7 I
最後に、Bbm7とB7の共通音がなく、少し唐突なので
#IVm7(ファ# ラ ド# ミ) → V(ソ シ レ ファ)
という関係を
#IVm7(ファ# ラ ド# ミ) → IV△7/V (ファラドミ / ソ):
に置き換えて、ラとミを共通させ、
EM7 Fm7 Bbm7 AM7/B EM7 が完成する、という感じです。
(コードwikiだとA/Bですが、メロディー含むとG#音が入りそうです)
このコード進行、G#がピボットノートとしてずっと鳴っているので
自然に聞こえるのだと思います。凄すぎますね。
複雑に見える場合は、まずは、③でなく②で置き換えた場合を考えると、
より理解しやすいように思いました。③が遠すぎてわかりにくいです。
上記の考え方だと、調性をさほど気にせずとも難しいコードが組めるので、
多少応用は効くのではないでしょうか。
この内容は今日思いついたので、出典がないです……。なにか裏付けが得られると良いのですが。
少しでも理解の助けになれば幸いです。
詳しく丁寧な解説、本当にありがとうございました!①から③へのジャンプ...頭がパンクしちゃいそうです笑。
削除ピボットノート(?転調をリードする音という意味でしょうか)をさりげなく織り込むことで、無理やりに見える転調をさせる技術や、調性にとらわれない作曲ができる菅野さんの脳内は一体どうなっているのでしょうか。まだまだ勉強することが山積みです...
懇切丁寧にリクエストに返信いただきありがとうございました!
kahoさん、joek punosさん初めまして!こんにちわ!井上ぼなと申します。
返信削除いつもこちらのブログの方楽しく拝見しております。素敵な楽曲を紹介していただき、いつもありがとうございます。
ちなみに僕も増渕さんや北園みなみさん大好きです。
コメント欄が楽しそうだったので、つい書き込みたくなってしまいました。
横からのレスになりますが失礼いたします。
キミドリ、僕も大好きな楽曲です。Bメロのふんわり進行していく転調がもうたまらん!という感じですw
さて、転調に関してですが、僕もjoek punosさんと同じように考えております。
Fm7, B♭m7は短三度下、つまり同主調に完全転調((借用和音としてもいいですが)していて、
その次にあたるコード、A/B(つまるところBsus4ですね)からは下属調key=Eにポンと転調していると考えています。
その後、更に下属調からの借用和音DM7をさらっと織り交ぜるところがニクイ進行ですね。
じゃあ、何故、同主調Fm7, B♭m7に転調したのち、そこから長三度も下がって下属調A/B,EM7にスルっと気持ち良く行けるのか。どういう機序に従って作曲されたのか。
というのは僕も自分なりに長い間考えてはいるのですが、残念ながら分かりません。かといって、作曲するときに単純に真似すれば出来るというものでもありません。
たぶん現代の音楽理論の段階ではまだ解明されていないと思います。いまのところそういうものだと思うしかないような気がします。(おそらくですが、菅野よう子さん自身は確固たる理論をお持ちだと思います)
ここまで書いといて役に立たなくてすいません・・・ kahoさんの考察も楽しく読ませていただきました!
そういえば同じく菅野よう子の似たような進行で「奇跡の海」のAメロひとまわし目があります。
「呼び合う心裸にするため」の部分です。こちらも同主長調(短三度上)→下属調の動きがあります。
それとⅤ(ドミナント)から始まるコード進行の曲はこちらなんか素敵ですよ!
https://youtu.be/uF3fyQEB0f4
実は僕もこのブログに触発されて、転調オススメ楽曲をブログで何曲か紹介してみました。
よろしければ、是非ご覧いただければと思います!
http://inoue.bona.boo.jp/?eid=140
終わらない課題に追われる日々をなんとか乗り越え、久しぶりにこのサイトを訪れてみればこんな丁寧な解説が!井上ぼなさん、ありがとうございます。
削除未だに「スルっと気持ち良く行ける」(すみません言葉をお借りいたします。他に言い表す言葉が思いつきませんでした笑)というものが理論的に説明できない。っていうのが音楽のむず痒いところですね。考えるな、感じろ。ってことなんでしょうか...奥が深いですね
それと大好きなエルフェンリートのOPがⅤから始まる曲だったとは!驚きです。
井上ぼなさんのブログも拝見いたしました。透明シェルターやプラチナなど、好きな曲がこう言う転調をしているのかととっても勉強になりました。ありがとうございます
このコメントは投稿者によって削除されました。
削除こんにちは井上ぼなさん。お読みいただき誠にありがとうございます。
返信削除楽曲の完成度におどろき、先だってSoundCloudのアカウントをフォローさせて頂きました。
「うそうそ時」の作曲に痺れました。歌唱も井上ぼなさんご本人なのですか…! すごいです。
菅野よう子さん、増渕裕二さんがお好きというのが、楽曲のクオリティから伝わってきました。
キミドリの考察、ありがとうございます。私も賛成です。
このコメント欄で、記事ひとつ分になりそうな感じですね!
最後のDM7のところは、EM7→DM7→EM7と動かしてEM7を2回使わせ、Eが主和音だよ、というのを
確定させているように聴こえました。すばらしいです。
今回ご紹介聴いて、好きな曲のひとつになりました。
僕は「おきまりの作風」が色濃く出た作曲家が好きなため、
菅野よう子さんの楽曲/文法の恐ろしい幅広さになかなか手が出せていないのですが、やっぱり聴くたび感動してしまいます。
少しでもパターンがわかるよう、ちょっと網羅的に聴いてみたく思いました。
*
ブログのご紹介もありがとうございます。拝読しました!
半音転調の例は、おそらくいくつも候補がある中で
「フォトンベルト観光ホテル」を選んでおられるのがたまらないです。とても好きな曲です!
この並びでは、SFP界隈の蓮尾さん/江口さんの小気味よい転調がとても心に響きました。
演奏は勢いがあるのに、和音は一つ一つ丁寧に組まれているというバランスが素敵です。
やはり、一貫する作風がある方に心惹かれてしまいますね。
続編記事も楽しみに待っております。
お褒めの言葉いただき、ありがとうございます!kahoさんも素敵な楽曲(リミックス)作られてますね。imoutoidがあったのでびっくりしました。僕もimoutoid、それに似たような方向性のbermei.inazawaさんが好きなんです。
返信削除菅野よう子さんにも「おきまりの作風」とか手グセのようなパターンはもちろんあるんですが、転調に関してのみ、まるで試すかのように毎回違うやり方なんです。面白いので是非、いろんな楽曲を聴いていただければと思います!
フォトンベルト観光ホテルはEDの映像も相まって素晴らしい曲ですよね。
light prayerとegoizmは蓮尾さん/江口さんのなかでも特に転調がきまっている楽曲だと思います。二人の他の転調している楽曲はなかなか難しいのが多いですが、紹介した二曲はスルっとスマートに転調するので好きです。
他に田中秀和さんも載せようかと思ったのですが、同じくデレマスの滝澤俊輔さんとかぶってしまうので、今回は見送ってしまいました。M@GICなんかはキモ可愛い転調(?)で面白いと思います。
続編記事はいつになるか分からないのですが(今回は勢いだったので、もう書かないかもしれません)、また機会がありましたら是非読んでいただければと思います。
ご返信頂きありがとうございました。今後の「いちにの」の更新も楽しみにしております!
こんにちは。
返信削除井上ぼなさんと同様
コメ欄の盛り上がりについ参加したくなってしまいました。
横から失礼致します。
>ドミナントから始まるコード進行の曲
実は私も最近気になっておりまして。
エルフェンリートのOPを拝聴したのですが
F#のハーモニックマイナーに聴こえてしまいました。
C#/E#ーF#m(V/VII#ーI)のような感じです。
不勉強で大変申し訳ないのですが
冒頭のドミナント部分を詳しくご教示いただけないでしょうか?
RINさん初めまして!こんにちわ。
削除うわー失礼しました!ⅤじゃなくてⅤ/VII#ですね。
と、すでにRINさん自身が詳しくご理解されているように見えるのですが、何に疑問をお持ちなのか分からないです…。コードもキーもその通りだと思います。
井上ぼなさん
削除初めまして!
ご返答ありがとうございます。
何故か今の今までルートのVII#が構成している和音だと
勘違いしておりましたw
しっかりVから始まってましたね…
楽曲・記事など拝見拝聴致しましたが
音楽好きっぷりがひしひしと伝わってきて
嬉しくなりました。
またお邪魔させていただきます。
明けましておめでとうございます!chocolate insomniaの解説を要望したものです・・・遅くなりましたが、要望に答えていただきありがとうございます&勉強させてもらってます!(そういえば神前さんのTWITTERでこの記事がとりあげられててびっくりしました~)
返信削除今年もブログの記事を楽しみにしておりますのでよろしくお願いしますm(_ _)m
こんにちはzunana777さん。あけましておめでとうございます。
返信削除chocolate insomniaはいつ聴いてもすてきですね。神前さんの丁寧な音作りが紹介できてよかったです。
twitter、私もびっくりしました!
今年ものんびり更新したいと思います。よろしくお願いします。