僕が想像していたのと違いました。
想像していた5000倍くらい素晴らしかったです。
感動しました。
こんなに楽しい音楽が生まれるなんて。奇跡的と思います。
感想書くのが無理なくらいの革新的な出来ですが、
つれづれなるままに感想を書いてみます。
↓
*
北園さんの編曲に感服したので、思ったところをメモします。
「promenade」は、まごうことなきポップスなのだけれど、
クラシック好きの心がくすぐられる感触があります。
#4 プラスティック民謡 が最高に好きです。クラリネット素敵。
この素晴らしさをどうやって褒めようかと考えたところ、
手元の本に、北園さんの才能を表すのにピッタリの言葉があったので、
こちらを引用します。
クラシックの作曲家 モーリス・ラヴェルが、
自身のオーケストレーションについて語った言葉です。
長いですが、とても大切なので読んでみてください。
あるとき、ラヴェルはこう言った。
「けっきょく、聴き手に錯覚を起こさせるのだ。
聴き手を惑わせ、われわれしか種明しを知らないものを信じさせるようにしなくては。
たとえば、一本のクラリネットにある旋律線を割り当てるとしよう。
だれもが似たりよったりになるだろうが、せいぜいこう考えることはできる。
『そう、クラリネットがここにはふさわしい』。
だが聴き手を誘惑したいと思うなら、クラリネットの下に、別の楽器を配置する。
これは聴き手にはわからないだろう。
例えばここにチェロのピチカートが重なっていることは、作曲者しか知らないというわけだ。
これはよく聴こえない。
メゾ・フォルテのクラリネットの下で、ピアニッシモのチェロが響くからね。
とはいえこれだけでも、クラリネットの音を微妙に変化させるには十分だ。
クラリネットの背後で、オーラや奇妙な影のようなものが聴こえるからね。
つまりこれこそオーケストレーションにほかならないわけで、
『聴衆を惑わす』ことなんだよ」
( 『ラヴェル -その素顔と音楽論』マニュエル・ロザンダール著, p.96)
ラヴェルの考えるオーケストレーション。
これは、まさに僕が「promenade」を聴いていて感じたことでした。
「promenade」で用いられている一つ一つの音色は、
既知の楽器から構成されています。
しかし、楽器の配置・音の混ぜ方を工夫することで
僕たちが今まで聴いたことがないような
「北園みなみの音色」「北園みなみの楽器」をつくりだすことに成功しています。
チェロのピチカートのような、ほんのすこしのアクセントによって。
*
例えば「プラスティック民謡」では、
クラリネットの旋律に重なるように
ギターやフルート、ピアノが配置されてひとつの新しい音色を作っています。
わかりやすいところでも、
0:04(クラリネット+ギター)
0:49(クラリネット+フルート)
1:32(クラリネット+ピアノ)
2:33(クラリネット+ギター(オクターブ下)) など、枚挙にいとまがありません。
あまりにさり気なく混じるので、ひとつの楽器 に聴こえてきますね。
同じクラリネットの音を基本としながらも、
どの組み合わせも個性的で、意外性のある音がします。
ラヴェルが提示するオーケストレーションの極意が
見事に結実していることが分かるかと思います。
『クラリネットの背後で、オーラや奇妙な影のようなものが聴こえる』のです。
*
この点に着目してアルバム全体を聴いてみると、
「promenade」の中にどれほどの膨大な音色の提案があるか、
きっと驚かれると思います。
本当に数えきれないくらい!
単音に聞こえても、実は巧みに多層的になっているんです。
ピアノでアタック音をつけたり、ミュートトランペットでノイズ味を増したり。
サックスとコーラスを混ぜて不思議な音色を作っていたり。
そこには本人しか知りえない、魅惑のテクニックが隠れています。
生音に加えて、シンセ・電子音すら重なるので、その可能性は無限大です。
離れ業過ぎます。
僕は、ラヴェルが大好きなのもあって
この卓越したオーケストレーション作法が好きで好きでたまらないです。
きっと北園さんには、音色のレシピが見えているのですね。
うーん凄いです。
これが新時代のポップス……!
北園さんとの比較対象が浮かびません。
(ラヴェルとかストラヴィンスキーとかが頭をよぎってしまいます)
北園さんの作品は、
一聴しただけで「北園みなみっぽい!」とわかるくらい個性に溢れていますが
その理由はこういう編曲作法からも来ているのではないかと思います。
重ねた音色が独特なので、直感的にわかるんですね。
*
北園さんによって、新しい好みが生まれた感じがします。
僕はこういう音に感動するように出来ていたのですね。知らなかった。
人間には、今まで使っていなくても、
まだ見ぬ新しい音に感動するような回路が生得的にあるのだ、と実感します。
その前提があるから、新しい音楽は更新し続けられていくのだと思いました。
なんというか、もはや音楽というジャンルそのものへの畏怖が生まれます。
まだこんなに沢山の良さが隠れているなんて。
未知の良さを誰にでも分かる形で表現できたというところが二重に凄いですよね。
これから永く聴きこんで、北園さんの提案に気付いていきたいと思います。
今後も感想を書いてみよう。
*
「promenade」、他の方がどういう感想を抱くのか、とても興味があります。
作曲も演奏も歌も、褒めるところばっかりなので。
これ以上ないくらいオススメします。
にゃん。
(10/31 追記)
北園さんの新しいお仕事。わあああ。超すごい!
なんて優れた耳をお持ちなんだろう。
この感動をどうやったら言葉にできるんだろう。
にゃん。
(10/31 追記)
なんて優れた耳をお持ちなんだろう。
この感動をどうやったら言葉にできるんだろう。
こんにちは
返信削除北園みなみさんのアルバムを私も聴きました!
早速、ネットではいろいろな方が北園みなみさんを褒め称えているなかで、
kahoさんの感想は北園さんの音楽との新しい向き合い方を
気づかせてくれるきっかけになってとても勉強になりました!!
私はCD発売前にラジオでソフトポップを聴いたのですが、
その時はあまりの衝撃で、心臓のバクバクが止まりませんでした。
(アルバムを聴いてさらにぶったまげるわけですが)
自分で楽器を演奏することもありませんし、音楽に関する知識も皆無な自分でも
改めてアルバムを一通り聴いて印象に残るのは、音の響きの美しさです。
「美しい」としか表現できないのも悲しいのですが、
言ってみれば、ブリリアントカットが施された
ダイヤモンドのような煌めきを感じます。
(表現が抽象的すぎるなと思うのですが)
緻密で一見(一聴)するだけでは、わからない精巧な(音への)工夫があるけれど、
それらが、「誰もが綺麗と感じるな強力な輝きを放つため」という点だけに向けられている。
多くの人が見逃すような仕掛けを駆使して、万人で感動が共有できるもの仕上げている。そう感じます。
この矛盾しているようなことを、見事やり遂げてしまった北園さんには感服するしかありません。
自分のような素人が聴いてもワッと驚くような感動が得られますし、
熱心に音楽をつくっている人には、さらに凄みが迫って感じられるのではと想像します。
(染谷さんも「ミュージシャン全員総辞職」という表現を使っていましたね)
あとkahoさんがおっしゃられる「音色の提案」が膨大にあるからか、
北園さんの音楽はどこかミステリアスに感じることもあります。
たぶん何度も聴いて「ここがこうすごい」と思ったとしても、
さらに別の解がありそうな深みを3~5分の曲に入れ込むのがすごいなと単純に思います。
(1stアルバムなのに、すでに北園節が出来上がってる感!)
どれも素晴らしい曲なのですが、個人的には気に入ったのは、
ソフトポップとプラスティック民謡です。
ソフトポップのイントロの盛り上がりは、
自分が北園さんの登場を待ち望んでいた気持ちとリンクして、
ストリングスとブラスの音色が泣けそうなぐらいしみいります。
プラスティック民謡は、展開というか構成が不思議でくせになるのと、
日本人がもつ音楽観のつぼを絶妙な強さでつかれてるからか耳から離れません。
なんとなくですが、最近はグルーブをつくるところに注力している音楽が多いように感じたので、
(ライブではすごく盛り上がるのでそういう音楽も大好きですが)
その分北園さんの音楽はとっても新鮮に楽しめました。
いろいろ感想はありますが、長くなりましたのでこのあたりで。
まだまだこれからもたくさん聴こうと思います!
こんにちは。コメント頂きまして誠にありがとうございます。
返信削除僕も単なる音楽好きで知識も乏しいため……
いつも「どうか伝わりますように」という気持ちで記事を書いているのですが
もしアルバムを聴く楽しみがちょっとでも増えたのなら嬉しく思います。
・僕も再生ボタン押してからの「ソフトポップ」は衝撃でした。
笑いと鳥肌がいっぺんに出ました。
それ以降、何度聴いてもわああああが続いています。
どの曲も美しいですよね。
ダイヤモンド・ブリリアントカットの例え、とても良くわかります!
職人芸によって作り上げられた精巧な工夫、
それにより得られる普遍的で感性的な美しさ、というところだけでなく、
見る方向によってきらめき方が変わる、
常に別の解が隠れているというところも含んだアナロジーになっていますよね。
聴いて初日のインプレッションだけでこれだけの発見と感動があるわけですから
当分は、肌身離さず指にはめておきたいです。キラキラと。
・僕もソフトポップ、プラスティック民謡が好きです。(全曲好きでした)
ソフトポップはとにかくイントロの「初めまして、北園です!」感がいいですよね。
すごい転校生がやってきたぜ!感が。
変てこで楽しくて、北園さんのデビュー一曲目にふさわしいです。
聴いてて凄いと思うのが、中間部にはいっている謎の超低音シンセ(2:46-)です。
どうやったら思いつくんでしょうか。超かっこいい。
プラスティック民謡は、一番奇をてらっているはずなんですが、
不思議と一番しっくり心に収まります。日本人のツボ、確かにありそうです。
斬新で懐かしいです。
全体通して北園さんの演奏がものすごいので、
普通のノリ感と違う、北園さん独自のグルーブが生まれている感じがしました。
僕も、今後もずっと応援したいと思います。
「promenade」だけ聴けば、既に北園節は完成されているように思いますが、
あと100回くらい進化しそうな気がします。
楽しみです。
早速のご返信ありがとうございます。
返信削除ソフトポップの超低音シンセ、やっぱり耳に残りますよね!
ほんとしびれるかっこよさです!
北園さんがどのような意図で入れたかはわかりませんが、
個人的にはあの低音があることで、ジャンプするときに
かがむような「ため」が耳にできていると感じます。
低音の前に一瞬はいる「ピヨーン」って音を合図に
ここから第2のイントロですよ、みたいな。
異質な音で違和感があるのですが、
あの沈むような音があるからか最後のサビに向かって
管楽器、コーラス、弦楽器がつくる盛り上がりが
より甘く鮮やかに聴こえてきて、ほんとグッときますね。