http://crst.at.webry.info/201310/article_1.html
こちらの記事を読んで。
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真部脩一さんの何処に惹かれるか、自分でも明文化できないところがありましたが、
「抑制の中のロマンチシズム」が好きなのだと実感しました。
僕が好きになるものは、昔から似ているようです。
ジャンルはバラバラですが、
筒井康隆、モーリス・ラヴェル、黒田硫黄、パウル・クレー、笹井宏之。
そして真部脩一も、同じ属性を持つようです。
彼らは、主に「方法」の作家です。
誰が見てもその人だとわかる独自の記法やルールを備えている。
作品中の技巧や遊びで、相手を楽しませるのが持ち味です。
エンターテイナーであるがゆえ、
彼らは、めったに素を見せません。感情をそのままの形で表さない。
しかし、彼らの根底には溢れんばかりのロマンチシズムが流れていて、
作品のなかのあるところで、それがきらめくときがあります。
「素直じゃない叙情」とか、そういったイメージ。
僕はそこに惹かれます。
昔の記事で、同じことを書いていました。
"笹井宏之さんの歌集「えーえんとくちから」"
http://kaho-ss.blogspot.jp/2013/01/blog-post.html
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冒頭の記事より少し引用しまして
>女性ボーカルでバンド編成でウィスパーな言葉遊びでチョット謎で.....
>等は偶々の産物であり、彼がもしパクられたとして悔しがるであろうポイントは
>他にあると思うのです。(中略)
>なので彼が自身と全く違った方法論で上質にロマンチシズムを
>音楽的に誰かが表現した時凹むでしょう。これも多分。
真部脩一の場合は、特に作詞にロマンチシズムを感じます。
では、真部脩一と違った方法で、
特に「作曲」で、この「抑制されたロマンチシズム」を表現できるでしょうか。
これを実現できているのは、僕の好みで言うと、モーリス・ラヴェルかなと思います。
そして、現代だと Lamp を挙げたいです。
本当に、自分の好みだけの話です。
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ラヴェルのバレエ組曲「マ・メール・ロワ」より、「美女と野獣の対話」。
ラヴェルのバレエ組曲「マ・メール・ロワ」より、「美女と野獣の対話」。
・ファゴット(バスーン):野獣
と役割を当てはめた、小さなラブストーリーになっています。
0:00- A 美女の歌。 優しい声。
1:08- B 野獣の歌。 半音階の野太い声。
2:08- A+B 美女と野獣の対話
高音と低音のデュエットです。たどたどしくも楽しそうな掛け合い。
2:56- ハープの魔法
3:25- B' 野獣が人間(=弦楽器)に変化!
Bの半音階フレーズが弦で再演奏される。
ラヴェルは言葉ではなく、
あくまでも形式によって、形式を最大限に発揮することで、
ロマンチシズムを表現することができました。
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またラヴェルは、第一次大戦で亡くなった友人6人のために
「クープランの墓」という6曲の追悼組曲を書きました。
その中の一曲、メヌエットです。
その中の一曲、メヌエットです。
彼は、感傷的な表現を避け、あえて古風で端正な形式(=メヌエット)で曲を書きました。
湿っぽさのない、きれいな音楽です。
淡々として美しく、抑制されながらも音楽は高ぶっていきます。
彼にとっては、悲しさを「悲しい曲調」で表現するのは耐えられなかった。
淡々と形式的だからこそ、彼の感傷や悲しみの深さが伝わってくるような思いがします。
素直じゃないところが、とても好きです。
淡々として美しく、抑制されながらも音楽は高ぶっていきます。
彼にとっては、悲しさを「悲しい曲調」で表現するのは耐えられなかった。
淡々と形式的だからこそ、彼の感傷や悲しみの深さが伝わってくるような思いがします。
素直じゃないところが、とても好きです。
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Lampの「心の窓辺に赤い花を飾って」
永井祐介さんの作曲です。
淡々と抑制された曲調のなか、刻々と場面が移り変わっていきます。
中間部に挿入された突然の雨音や
3:10の頂点に向けて、狂気的なまでに高まる編曲。
「抑えきれない感情」が、「音楽の均整を破る」というかたちで表れています。
こういう形で感情を描く方法もあるのだと驚きました。
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あらためて自分はこういうの好きだな、と思います。
一言で表せる言葉があると良いのですが。
「ツンデレな作風」とでもいうのか。
タルトタタンのアルバムも発売されましたが、
返信削除真部さんと西浦さんの手法の違いなどを
考察される予定はありますか?
あったら嬉しいです!
こんにちは。marorororoさん。
返信削除お察しの通り、タルトタタンシングルもアルバムも楽しく聴いてます。
西浦さんは作曲されないので、作詞やリズムの比較になると思うのですが、
僕にはなかなか難しいかもです…。ごめんなさい。
西浦さんの作詞は、「ちょいネガティブ少女」の描き方が独特で好きです。
アルバムの他の方の作曲だと、
返信削除坂部さんのtokyo eyes はペンタトニックの真部風メロディー
田渕さんのcloseは、ペンタトニックのギターパートや、サビがF Em Am C の真部風コード
というあたり、前作を継承しているところもあるかな、と思いました。
真部さんと、進行方向・田中さんの作曲の比較はできそうですが、とてもとてもマニアックになりそうです。